「第3回日中友好平和学習の旅を終えて」 藤本緑

「第3回日中友好平和学習の旅を終えて」   藤本  緑       

 私は中国侵略戦争で日本軍毒ガス作戦に使用した毒ガスを生産した父の娘です。父の加害者と被害者の立場で証言する信念ある生き方に共感し尊敬しています。去年、父は悪性リンパ腫と解り治療がうまくいかなければ半年持たないと宣告されました。しかし、父は病気を克服してくれました。理解ある医師に恵まれ幸運です。前々から中国に行くことを決めていました。1年3ヶ月後に実現し嬉しく思います。まだ、投薬中のため付きそうことになり私も歴史の真実を学びたいと思い参加しました。

 印象深いことは南京大虐殺幸存者常志強さんの証言と北担村毒ガス虐殺事件の幸存者、李慶祥さんの証言です。あまりに悲しく生々しい残酷な内容でした。日本人として謝りきれない事だと思いました。辛いです。私の思いがこうですから、父はもっと辛い申し訳ない思いで溢れ、いてもたってもおれないように見えました。「時の政府に騙された自分に腹が立つ」と言ってました。私は父が謝ってすむ事ではないし、国として謝罪し保障できる事はすべきであると強く思いました。

 南京での通訳、常嫦先生、河北省北担村での通訳、陳俊英先生も感性豊かに詳しく通訳していただきました。また、バス移動中、楽しい雰囲気の案内は素晴らしく優しい心遣いいただきました。車窓から町並みや農村を眺めると中国は資本主義の影響で生活文化の格差が大きいと見えました。

 北担村では地下道を視察しました。家屋に地下道入り口があり、避難所、武器製作所が巧みに造ってありました。ベトナム戦争時の村の地下道を思い出しました。人間は困難を克服する力があると見せつけられました。万里の長城を見てもそう思いました。

 北京で歩平先生の座談会は貴重なものとなりました。現在の日本の歴史観が歪曲されていること、日本は戦争による被害者意識が先行している、それにはマスコミにも責任がある。愛国心が日本と中国では大きく違うという受けとめをされています。その通りだと思います。私は平和を守り、人間を大切にする心があるかないかは重要な問題であると思いました。歩平先生は韓国・中国・日本で新教科書を作成中と言われ、今後の教育に生かされるべきだと思いました。中国政府は日本軍の遺棄した毒ガスの場所を調査中であり、元日本軍の証言者を求めているとのこと、加害責任をとるべき証言をしてほしいです。

 上海では蘇智良先生にお会いしました。中国では、従軍慰安婦問題を研究されている第一人者の先生です。紀念館にも多くの資料が展示されていました。蘇智良先生の案内の様子を北京中央テレビが取材していました。展示の写真の中に「大和撫子サービス」と看板に書いてあったのがショックでした。

 戦争は絶対してはならない、戦争は最大の差別であると思いました。旅行中は多くの著名な方との出会いを与えていただき光栄です。今後の生き方を問われている強いプレッシャを感じています。また、お心遣い、お世話をしていただき感謝でいっぱいです。同時に歴史の真実を一人でも多くの人に伝えて行く、政府へ戦争の謝罪と責任を取らせるよう訴える使命を受けたと思っています。今度のような友好学習をはかりつつ、日中友好平和の輪を全国に広げる事を目標とし、身近な人たちと地道に活動していきたいと思います。最後に父が無事旅を終える事ができました。旅行団の皆様に感謝します。本当に充実した学習の旅でした。ありがとうございました。