「日中友好交流の課題」 藤本安馬

「日中友好交流の課題」    藤本安馬

1:はじめに

 「百聞は一見に不如」に対し、毒ガス生産者として加害の犯罪性の立場に立つ者としては「百聞は百見に限る」と基調する。毒ガス生産は毒ガス作戦の根源をなすもので、加害の責任は重大であることを充分認識しているところであるが、今回の交流学習で被害者の証言を真摯に受け止めて慚愧に堪えない、悔いても悔いきれない、恥じても恥じきれない。被害者との対面は何とも言い難い衝撃的な出合い、表現し難い限りである。「生涯」忘れることのできない、忘れてはならない。日中友好平和の実現に向けて行動を起こす第一歩と考える。その課題を具体的に明確にするために、平和憲法、教育基本法、世界人権宣言、及び国際人権規約更に有事関連七法について学習を徹底し闘う仲間づくりを強化し、世論に訴え続けなければならない。第3回日中友好平和学習を「百聞」は三見に滞るのみならず中国全土に亘る「百見」の学習を「要」とする考えに至った。それは保守的反動政治勢力より「毒ガス島歴史研究所」は強し、と世論が評価するまで研鑽し続ける。

2:政治・経済・社会の現実

 資本主義社会であろうと、社会主義社会であろうと政治、経済、社会の多重構造であることは「百聞は一見に不如」にあらず「百見」に限るのである。北京空港から保定市へ車で移動、中国時間20時といえども住宅に灯りが見えない。つまり、まだ現場での労働時間帯なのである。もう一つは電力不足の影響もあり「省エネ」を強要されていると見る。市街地と農村地区では相当の格差がある。日本の常識を遙かに超えた状況を見る。北担村は北京の南、河北省保定市の市街地から車で約2時間のところにある。見渡す限り水平線トウモロコシ畑、360度回転すれど、山一つはおろか丘一つとして見ることができない零細農村である。この平穏な北坦村に日本軍による非道極まりない毒ガス作戦によって千人を超える村民全滅とも言うべき毒ガスによる大虐殺が実行された。辛くもその難を逃れた生存者によって死者の霊を弔う慰霊碑が建立された。その地下道毒ガス大虐殺事件から62年今も死者の怨念が、霊魂が紡皇しているように感じてやまない。

3:北担村毒ガス虐殺の証言:李慶祥さんの証言(当時14歳)

(1) 日本の侵略戦争は「鉄」の事実だ。1942年「前事不忘后事之師」である。

(2) 日本軍隊、民衆も軍国主義権力に騙された史実を尊重する。

(3) 瀕死の経験、前事不忘后事之師、以史為鑑開創未来、平和への教訓とする。
この貴重な証言に応える。

(1) 毒ガスをつくった事実を語り続ける。

(2) 戦争は最大の人権侵害で損の分け取りで平和への有効な教材とする。

(3) 毒ガス障害の被害者である前に加害者である。

(4) 中国側の認識は日本軍は「鬼の子」と表現する。その鬼の子が三光作戦、五光作戦をしたその作戦を支持した毒ガス生産者も鬼の子である。鬼の親に子が説教する。説教するには「鬼から」人間に立ち帰らなければ、説教できない。どうすれば人間に帰れるのか。その鬼の親は110年前から中国侵略を画策し、1894年日清戦争強行から始まり、1945年中国侵略戦争無条件降伏に至っているのである。今にして「鬼の親の侵略思想は、健在である。その鬼の親の侵略思想体質を変革させるには鬼の子自らが自己変革しなければ説得する能力は存在しえない。今回の交流学習によって課題付けをさせられた。その課題はとてつもない暴大旦深刻な課題である。

4:非人道的五光作戦

(1) 南京大虐殺、1937年12月13日死亡者30万人以上、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館を見学を朱成山館長の講演による学習を受け、追悼式、献花、追悼の言葉、大久野島の歌パート2、黙祷、厳粛に感極まった。①五光作戦とは、奪う、殺す、焼く、強姦、毒ガス使用②常志強さん証言(76歳)当時9歳大虐殺の壮絶さ、非人間的残虐性を目前でしかも肉親が受けるのを見た。「感」極まって涙の中で証言、弟を母親が抱きかかえている後ろから銃剣で突刺し7メートル先にはね飛ばした。今もその状況が瞼に焼き付き忘れ去ることができないと証言。全員感涙、慙愧に堪えず、日本人の愚かさ、五光作戦犯罪の謝罪をしなくてはいられない。

(2)北京、中国社会科学院近代史研究所
 北京といえば中国4千年の歴史を誇る首都がある、その歴史は「温故知新」政治経済、社会の多重構造は本質的には変わっていない現実である。この北京には中国社会科学院近代史研究所がある。そこの所長であり、中国遺棄毒ガス問題について中国きっての権威者である、歩平先生の講演を受けた。中国東北部黒竜江省チチハル市、2003年8月4日、旧日本軍のイペリットにより地下建設工事現場で43名が被毒した。内1名が死亡した、その背景について詳しく説明を受けた。現在の日本政府の戦争責任は重大としながら一線で戦争をした軍隊も、毒ガスを生産した人も被害者である。両国の安全を求める立場から寛容な心暖まる学習を受けた。しかし、我々としては無条件でその言葉を受け止める訳にはいかない。中国の立場と日本の立場は異なる。つまり被害者である前に加害者であることを棚にあげ、被害者意識を持つことは許されない。加害者は鬼である者が、被害者である認識に終始すれば、「鬼」から人間に戻ることは不可能である。何故なら、今被害者意識であると認めるなら被害者として「怒」(権力に対する)が何故起らないのかということに外ならない。被害者としての「怒」がなければ、被害者としての立場の自覚もなければ、闘いを起こすことは不可能である。その現実が日本国民の実態であるあることを敢えて主張する。

 歩平先生の提起は①旧日本軍の関係資料を全面開示すること。②中国各所の建設工事に関する事前環境調査及び手法を明確に確立すること③国際法の化学兵器禁止条約で処理義務がある。特に国民による、政府に対する追求を如何に展開させるかと期待されたと思う。

5:まとめ

 以上の総論、各論について厳しく総括が求められている。その内容の分析と見解を貧弱であるが提起したが尚、今日の国内情勢に鑑み過去の戦争の歴史が物語っているように中国に、中国人に対する差別意識を持たされたことも事実であり、その学習を徹底し戦争は最大の人権侵害で損の分け取りで政治的には分裂支配、経済的には収奪、社会的には不安、教育的には思想統制となっている。それは先進国、経済大国であればあるほど強制してくる。それが戦争の本質であると主張する。このことを明確にとらえ、その権力に抗するためには平和憲法、教育基本法、を武器とし有事関連7法を廃棄させ、平和主義を世論に訴え、国政に迫る「力」を拡大し闘い続けることが日中友好平和学習の任務である。