kaihyoukutsu

 なんにも拾うものがない日は、壊れた貝を
拾います。巻貝のカケラは、らせん状に巻い
た外側が割れて、内側の芯や、入口の堅い
部分だけが白く残って、まるで何かの骨の
ようです。私は貝の骨と呼んでいます。浜田
市畳ケ浦の岩だらけの海岸にもたくさん打ち
寄せられていて、なかにはほんとうに火葬場
の骨に似た感じのものもあります。あまり人
も来ない、波打ち際の岩の間にしゃがみ込
んで、吹き溜まったように漂着している貝の
骨を掬い上げていると、波の音も不思議と静
かに思えてきます。私は貝の骨の中から、
巻貝らしい特徴を残した、小さくておもしろい
形のものを拾って帰ります。

貝の骨に漂着物とビーズをまぜて
作ってみました。

 砂浜の海岸を歩いていると、波打ち際に、大きな二枚貝の小さな破片が散らばってい
ます。私はその中からも、申し分のないカケラを拾い集めます。つまり、十分に摩滅して
角がなく、ころっとして、やや分厚い。真っ白か、微かに飴色で、巻貝の貝の骨と違って
すべすべでなければいけません。歪んでいたり、指で触って小さなでこぼこがあっても
だめです。表面だけにうっすら、貝の模様を残しているのは悪くないと思っていますが、
もう貝だった昔のことなんか忘れてしまって、波しぶきに濡れて光っているか、乾いた砂
の上で、毎日雲を見て暮らしている、そういうカケラだけを拾います。もちろん、集めて何
かの役に立てようというのではありません。両手で掬って、ジャラジャラと音を楽しんだり
掌に幾つか載せて、なんだか嬉しかったりします。

 砂浜には小さな二枚貝も打ち寄せます。その中に、貝の形はそのままで、表面が白い
砂糖をまぶした豆菓子のようにザラザラに摩滅して、コーンフレークではないけれど、フ
ローストシュガーと私が呼んでいるものがあります。これはある程度たくさんあったほうが
いいのです。拾い集める基準は、美味しそうであること。縁は微かにギザギザ、貝の内側
までザラザラになっていて、薄くて真っ白。または、ちょっと生姜がきいていそうなのも悪く
ありません。これも以前一度小さなビニール袋に一杯拾ったことがあります。

漂着物エッセー (4)

貝の骨

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