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漂着物エッセー (5)

鳶とカラス

 北九州の海岸で、トビを餌付けしている人に出
会いました。いったいどこから来たのかと驚くほど
の数のトビが、ゆさゆさ、バサバサと空から降り
てきて、防波堤のそばにいる、その人の周りに飛
び交い、集まってくるのです。たまたま近くを歩い
ていた私は驚きました。突然、空がまだらにしか
見えないほど、たくさんのトビに囲まれて、手を伸
ばせば届くほどだったのですから。「鳶が鷹を産
む」という諺もあって、たいした鳥ではないような
気がしていましたが、こげ茶色の翼は頑丈で力強
く、目は鋭くて、私の顔のすぐそばで羽ばたいて
いる姿は迫力がありました。

海岸に落ちていた羽・羽・羽・・・
トビ、カラス、カモメの仲間?
浜田市国府海岸など

 トビは浜田市国府海岸、畳ケ浦付近でも、漁港
の空の上辺りに、たくさん輪を描いて飛んでいま
す。国府海岸の波除けフェンスの上に止まって、

精悍な顔つきで、じっとこちらを睨んでいたりします。漂着物を探して歩いていると、突然
バサッと羽音がして、砂浜の上を影が通りすぎ、驚いて見上げると、頭上をトビが一羽だ
けで飛んでいたこともありました。

 ところで浜辺を歩いていると、たくさんのカラスにも出会います。カラスの方は、漂着物を
探す私の何メートルか先にいて、彼等も、彼等の価値観で何か探しているようです。おい
しいご馳走が目当てでしょうが、カラスは光った陶器やガラスの破片を巣に持ち帰ること
があるそうですから、彼等の巣の中には、ひょっとして漂着物も混じっているかもしれま
せん。カラスの宝物が欲しいと私は前から思っているのですが、しかしそれはカラスにとっ
て迷惑な話でしょう。何か良い物はないかと下ばかり見ていた私が、ふと目を上げると、
波打ち際に小さな足跡を残して、カラスが浜のゴミをつついています。ときどき黒い、きれ
いな羽が落ちていて、カラスのものだったりします。ごくたまには死んでバサバサの黒い
カタマリとなって、漂着物と一緒に横たわっていたことがあります。
 私にとって、トビとカラスは漂着物の世界の住人で、私はトビに挨拶し、カラスと一緒に
浜のゴミを探して歩きます。

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