スプリットケーンロッド テーパーの考察

ロッドテーパーとアクション
ラインをキャストする時や魚等をかけた時の竿の感じを「ロッドアクション」と言います このロッドアクションに付いては色々と言われていますが 意味がはっきりとした言葉で説明されていないため良く分からない事も多いと思います
ロッドを設計する上で避けて通れないところですので私が使っている言葉と合わせ説明します
なおこれは私のやり方ですので他の人とは違うと思います

ロッドテーパー・ストレスカーブと二つのアクション
ロッドテーパーに付いて
スプリットケーンロッドロッドの製作では頻繁にロッドテーパーと言う言葉が使われます
これは正にロッドの太さの変わって行く状態(テーパー)を表す方法で 普通ティップから5インチ毎に平行面の間隔を数値で表します
通常ギャリソンタイプと言われるプレーニングフォームはこの5インチ毎に溝の深さを調整出来ますのでこの数値に対応して同じテーパーを削り出せる訳です
このシステムを使えば過去の名竿もテーパーが分ればコピーする事が出来ますので まずまず似たような物を作る事が出来ます (まったく同じではないがおよそ似たような竿)

実際のフォームの間隔設定にはテーパーを表にして使いますが 接着剤の厚さは接合面の大きさによって変わりますしフォームのくせ等もありますので各ポイント毎に数値を修正してやらねばなりません
またテーパー表をグラフにすればテーパーの形を目で見る事も出来ます これにより「ロッドアクション」といわれるかなり不確かな物が目に見える形として現れます
実際のテーパー設計では このグラフを見ながらテーパーの数値を調整して行く方法が良く使われます。(後でグラフを示します)

これらの方法はバンブー素材の能力がおよそ均一なために出来る事で 製品材料毎に能力が大きく異なる場合は適合しません
実際同じ加工で同じテーパーに作られたトンキンケーンロッドは殆ど同じ仕上りで同じ物の量産が出来ます (テーパーが同じならば一緒というわけではありません 焼き入れ・接着剤・塗装・ガイド・竹板の切出しや節散しなどでも変わってきます 同じ製作者が同じ加工をした場合殆ど同じと言うことです)
(注) ハンドプレーニングの竿は一本一本違うとか 同じトンキンケーンでも竹によって違うとか聞くと思います それは否定しませんが違うと言えばカーボンのロッドでもそれぞれ違うと思いますし(渓流竿など同じ銘柄でも結構違いますよね) 振り具合は その日の体の調子でも違います 実際に釣場で使って多少の違いがあったとしてもその原因もどちらが良いのかも判らないし釣果には影響が無い つまり同じ仕上りと言って良いと思います
ストレスカーブに付いて
ギャリソンがロッドテーパーを計算する中で示している竿のティップから5インチ毎に竹材が耐え得る最大圧力(f)を想定しグラフに表した物で ティップ部が最大でバットに行くほど小さくなる曲線です 一般的にはロッドテーパーのグラフはストレスカーブの上下を逆にしたような形になります
彼は本の中でストレート・セミパラボリック・パラボリックの3種類のテーパーを述べ自分の竿はセミパラボリックと言っています
ギャリソンの公式として有名な竿の直径(d)を求める公式 3√M/0.120f (Mはモーメント)では竿のテーパーの形状がこれで決まるので あるテーパーを計算するためのテンプレートのような物として考えたと思われます (おそらく彼はペインの竿を元にフライラインの重さや好みに合わせて竿のテーパーが変更できる計算システムを考えたのでしょう。)
これを受け後年パラボリックなストレスカーブのロッドテーパーをパラボリック ストレステーパー ストレートなストレスカーブのロッドテーパーをストレートライン ストレステーパー・その中間的テーパーをセミパラボリック ストレステーパー等と呼んでいます 下にグラフを示します

ウエーブ リニア アクションに付いて
テーパーの付いた細い棒の太い方を持って手首を円形に動かすと その動きは棒の曲りとして太い方から細い方に移って行きます 又太い方を固定して細い先端に棒に垂直な方向の力を加えると棒の曲りは細い先から太い方に移って行きます
今釣竿をキャストするとグリップに加えた力は移動する波の様に移って行きロッドティップを通ってフライラインやルアー・錘等に移って行きます
又魚や地球等がかかって合わせをするとグリップに加えた力はロッドティップからグリップに向かって曲りとなって移動します
ウエーブリニアアクションとはおよそこのような現象を名づけたもので どの釣竿もこの影響下にあると言えますが均一なテーパー変化の釣竿ほどこの影響を受けておりこの傾向の強いロッドをプログレッシブな竿と言います
パラボリックアクションに付いて
厚さも硬さも均一の板の片方を固定し反対の端に錘を乗せた時 板の各位置毎にかかる曲げ力(ストレス)をグラフにするとパラボリック(放物線)なカーブになります
板がたわんでいるところを横から見ると錘の所が一番大きく動いていますそして固定した端に近づくほど動きは少なくなりますこれがおよそパラボリックなな形になるわけですが (実際は動きの量ではなくそこにかかる曲げ力[ストレス]の事ですので 直接目で見る曲リとは違うわけです)
ウエーブリニアアクションと違い力を加えると各ポイントは同時に変形します これがパラボリックアクション又は同時アクションと呼ばれる物です
パラボリックアクションとはおよそこの様なもので ウエーブリニアアクションと同じく どの釣竿もこの影響下にあると言えますが パラボリックストレステーパーの釣竿ほどこの影響を受けており この傾向の強いロッドをパラボリックな竿と言います

●ロッドアクションとテーパー
ロッドアクションとRise in inches
ロッドテーパーを表すとき 縦軸にロッドの平行面の間隔を横軸にティップからの距離をとってグラフにすると ティップからの距離が大きくなるほどロッドの平行面の間隔も大きくなった右上がりのグラフが出来ます
そしてテーパーがきついほどグラフは急になります このグラフの形と傾きで表す「ロッドテーパーグラフ」がいわゆるロッドのアクションと呼ばれるものを目に見える形にします
Ray Gouldは彼の本の中で ライズインインチと呼ぶロッドテーパーの傾きを0〜100インチの間の平行面間隔の増加量(変化した太さ)により表しこれを分類しロッドアクションとして名前を付ける方法を紹介しています
Ray Gould が発表しているロッドアクションは次ぎの表の様になります(勿論これはスプリットケーンロッドだけに適合するものです)
Rize in inches       
per 100 inches of length
ミリメートル換算 Rod Action カタカナ風読み
Up to 0.239'' 6.070mmまで Extra slow エクストラ スロー
0.240'' - 0.260'' 6.096〜6.604mm Slow スロー
0.261'' - 0.280'' 6.629〜7.112mm Medum ミディアム
0.281'' - 0.300'' 7.1374mm〜7.62mm Fast ファスト
0.301'' and up 7.6454mm以上 Extra fast エクストラ ファスト
表のようにテーパーのきつさによってエクストラスローからエクストラファストまで設定されています
この傾きをあらわす数値ををRay Gouldはロッドアクションと表現しておりグラフの形に付いてはロッドテーパーがパラボリックとかストレートラインとかと呼ぶだけでアクションと言う文字を付けていません。そこで私も勝手にそのようにやっています。つまり「パラボリックなテーパーのファストアクションの竿」と言う具合です。
 アクションには竿のまがり具合を表すアクションも有り混乱しています。ここではテーパーの傾きをアクションと呼びますのでまがり具合を表すアクションは次ぎのテーパーの所で説明します。
 ロッドのバット側を円運動させた時ロッドが曲ってティップが動き始めロッドが直線になるまでの時間をティップスピードと呼ぶとすれば、その時間はエクストラスローからエクストラファストへと早くなって行きます。ただし実際の竿の長さやロッドテーパーと合わせて考えないと意味がありません。
 この表による呼び名は、誰かのテーパーを検討するときや新しいテーパーを考える時のおよその目安になりますし0.02''毎のクラス分けは実質的でライズが0.02''変わるとアクションはひとクラス変わるわけです。

●スプリットケーンロッドの性格を決めるテーパーに付いて
次ぎにテーパーの形に付いて述べます
大きくは ストレスカーブによりストレート・セミパラボリック・パラボリックの三つにテーパーが分類されていますが この間に明確な線引きがされているわけではありません
また複合的なテーパーの場合もありますので 実際には一つのロッドのテーパーもそれぞれに影響を受けているといえます
このテーパーグラフを表に示しますセミパラボリックのグラフはバットにスゥエルが入っています
また まがり具合を表すアクションとして最後にパラボリッツク・プログレッシブ・ファストティップに付いて説明していますこれはテーパーの形ではありませんが一つのグループといえます
ストレートライン(テーパー)
ロッドのストレスカーブが直線に近いロッドテーパーでテーパーグラフはコンスタントなスロープ
トップに加重するとベンディングカーブがティップからだんだんバットに移ってくるプログレッシブなテーパー
パラボリック(テーパー)
ロッドのストレスカーブがパラボリックに近いロッドテーパーでテーパーグラフはおよそ中央で盛上ったスロープ
ベンディングカーブがバットよりに発生するパラボリックなテーパー
セミパラボリック(テーパー)
ストレートとパラボリックの中間的なストレスカーブもしくは前半と後半でストレスカーブが変わっている(前半ストレート後半パラボリックとか)ロッドテーパー
ダブルパラボリック(テーパー)
パラボリックなティップセクションに最初がストレート後半がパラボリックなバットセクションをくみ合わせた複合テーパー
パラボリック(アクション)
先に二つのアクションの所で説明しています
プログレッシブ(アクション)
ウエーブリニアアクションの竿 ストレートラインテーパーやセミパラボリックなロッドテーパーに見られるアクション
ファストティップ(アクション)
ティップセクションに強いパワーを持ったテーパーデザイン ティップセクション部の長さだけでパワーを受けなければならないのでティップセクションはかなり太く強い その為曲りやすさは制約される
アメリカのティップアクションは本来この様な物でティップだけが柔らかく曲る竿では無いはず

●最後に
ロッドの使用感はテーパーの傾き(ロッドアクション)と形(ロッドテーパー)で決まります また硬さに付いてはロッドへの加重負荷の問題で関係はありますがここでは触れませんでした
ストレスカーブとロッドテーパーの部分は簡単にすませています「こんな感じ」程度に読んで下さい
実際のテーパー設計は 今あるテーパー(自分のでも過去の有名なテーパーでも良い)を変更する形で行うか ストレートテーパーのロッドアクショングラフを元に変更を加えるか が普通に行われていると思います
このようなやり方は不確かに思われるかも知れませんがアクションとテーパーの形を良く検討すればうまく行きます 実際8 1/2ftのパラボリックでスローなフライロッドを元に6 3/4ftのプログレッシブでファストなルアーロッドを設計した事も有ります
上の説明以外にもスエルバットを始め複合テーパー・コンパウンドテーパー・ホロー(中空)化・ダブルビルド(表皮に近い部分の二重化)など色々な要素がありますが今回は触れていません
自分だけのテーパーを御希望の方も既成のテーパー(私のも有りますし過去の有名メーカーまたルアーロッド等も有ります)を御希望の方も是非ご相談下さい

伝統工芸品スプリットケーンロッド製作
splitcane rood maker
香川 佳久
〒739-0461 広島県廿日市市大野4455番地
Tel.Fax. 0829-55-3540
E-mail:splitcane@snow.megaegg.ne.jp

各種洋竿(船竿・ルアー・フライロッド他)製作致し鱒