これがスプリットケーンロッドだ!

○スプリットケーンロッドとは何だ
タケ類の一種バンブーを使って製作された釣竿のことです。
中国広東省西川流域で特別に栽培されるトンキンケーンを原材料に これを表皮の側が一辺になる様に小さく裂いて三角形に削り表皮の側を外にして張り合わせて一本の竿にしたのがスプリットケーンロッドです

正三角形でテーパーを付けた竹片を六枚張り合わせると六角形の竿が出来ます
3.6mの材料の竹を切り分け先の方からロッドのトップセクションを元の方からバットセクションを作ります ツーピースなら二つスリーピースなら三つと継ぎ数に合せて切り分ける事になります
太い元竹の構造そのままに表皮に近いロッド製作に適した良いところだけとって細く作り直すわけです
【タケ類の呼び名に付いて】  タケ類には大きく分けて、バンブー・竹・笹の3種類が有ります。竹と笹は地下茎から芽が出て増えますが、バンブーは根元から新しい芽が出て増えますし遺伝子も違います。ケーンは籐など稲科の植物の総称です。文中にバンブー・ケーン・竹など取り混ぜて出てきますが断らない限り竿用に作られたトンキンケーンの事です

【スプリットケーンロッド・バンブーロッド・ケーン竿・竹竿などの呼び方に付いて】   このホームページの中ではトンキンケーンを削り張り合わせて作った釣り竿を呼ぶときの名前としてどれも同じに取り扱っています。「取り扱ってはいますが 自分ではスプリットケーンロッドと呼ぶのが良いと思っています ただバンブーロッドの方が一般的な呼び方かもしれませんね」

【トンキンケーン】   以前竹が積み出された地域により呼ばれる様になった呼び名

○スプリットケーンロッドの歴史
西洋では、1700年代初め頃からそれまでのグリーンハートやランスウッド等木材に替えてタケ類による釣竿が作られるようになりました

1800年代の終わり頃竹の表皮に近い繊維の重要性に着目しテーパーを付けた6枚の竹板を表面を外にして張り合わせる方法に改良されます これが現在まで続くスプリットケーンロッドの始まりと言われ現在まで100年以上にわたってその技術は継続蓄積され多くの名竿を作り出して来ました

現在釣竿製造の主力はカーボン・グラファイトに移っていますがタケ類の物性は釣竿に最適と言われており国内外に多くの個人メーカーがあります

○スプリットケーンロッドは本当に高性能か?
グラスロッド〜グラファイトロッドと続いてきた科学素材ロッドの僅かばかりの歴史の中で 竹という素材は 性能の悪い過去の物との見方をされて来ました
それはすぐれた竹竿を知らないままに安価な化学素材の竿を多くの人が使ってきたからなのでした (実は私も、自分で作るまではそう思っていました)

私がスプリットケーンロッド作りを思い立ったのは、自分の竿が設計出来ると思ったからですが、作ってみてそのすばらしさに驚きました、それはこれまでのグラファイトロッドの愛竿(オービス・セージ・ルーミス等有名メーカー品)が色あせて見えるほどの衝撃でした。その時竹という素材とその加工方法に研究するべき余地が有る興味深い物質であることを知ったのでした

竹の材質は、縦に走る非常に硬いセルロースの繊維をリグニンと呼ばれる物質が取り巻き束ねた天然の複合素材です。そこまでは天然とは言えグラファイトロッド等と同じですが、天然素材故の大きな違いは竹のファイバーは表皮のエナメル質に近いほど多く硬くなっており複合素材としての良さを最大に発揮します
すぐれた加工により作られたスプリットケーンロッドは次の様な特徴を持っています
パワー繊維とそれを取り巻く部分の内部抵抗のバランスが良いので竹竿が自分で投げてくれるかのように近距 離から遠距離まで楽に投げこなします

☆竹竿の内部抵抗は、竿身の振動を抑えキャスティングを安定させると共に微少な振動を良くコントロールするので 「あたり」が良く分かり感度の良い釣が楽しめます

☆繊維の反発の初動がやさしいので食い込みが良くティップで魚を弾くことが少ないです
以上のような機能的特徴だけで無く 繊維がまっすぐに走った美しい外観を始め 植物で作られた道具としてのなじみやすさや使い良さそして植物である竹は二酸化炭素を固定すると共に製造時のエネルギー消費も少なく環境への負担の少なさでも新しい時代をリードしています

多くの美点の有るスプリットケーンロッドですが グラファイトロッドの様な過激な反発力やスピードは有りません また反発も素材により均一ですので 重量や長さに制約を受け作れる竿の種類に限りがあります
現在私の製作品目は 船用小物竿(キス・メバル・カレイ等)ルアーロッド(UL〜MH程度)フライロッド(#3〜#9程度)和式毛鉤竿(3m程度)等です

 釣竿は一本毎に最適な設計を行い一本の竹からバランス良く竹板を割り出します 正確なノードスタッガリング(節ずらし)適切な焼き入れ細心の注意を払ったハンドプレーニング(手カンナでの削り)そして神経を使うグルーイング(接着)により竿身を製作しています

伝統工芸品スプリットケーンロッド製作
splitcane rood maker
香川 佳久
〒739-0461 広島県廿日市市大野4455番地
Tel.Fax. 0829-55-3540
email:splitcane@snow.megaegg.ne.jp

各種洋竿(船竿・ルアー・フライロッド他)製作致し鱒