横向きのレントゲン


 レントゲンでの最初の診断は、「第5頸椎圧迫骨折」だったが、のちに医院長回診で「第5頸椎脱臼骨折」となる。

「あんた、手足ちゃんと動くの?」

「もちろんです。ちゃんと車運転してきましたから。」

「手足に、しびれはないの?」

「はい。ありません」

「首の骨が見事に折れてるよ、こんなにきれいに折れてるの初めてだね」    

「でも、最初の病院ではむち打ちと言われました。」

「そりゃ、その人首の骨が折れたレントゲン一度も見たことないのよ。だから折れてるってわからないのね。」

「どうしてですか、病院なのに....。」

「そりゃ、首の骨が折れたら死ぬから、生きて首の骨折った人の写真見たことないのよ。」      

「次の、病院では首の骨が折れているって言われましたけど、治療はしてもらえませんでした。」

「ああ、それね首の骨折った人を治療したことなかったから、治療の仕方がわからなかったのね。」

「なぜですか、病院なのに....」

「首の骨折ったり、折らなくても頸椎損傷を受けた人を治療できるのは、ここの労災と岡大、それから川崎医大ぐらいかな。あとのとこは、頸椎損傷の写真見てもたぶん分からないでしょう。たいてい死んだり、よくて全身麻痺になっているから。」

「やっぱり、首の骨折ったら死ぬんですか?」

「うん、これだけ折れたら、死ぬか、全身麻痺だね、全身麻痺は頭から下全部動かないよ....首だけちょっと動くけど。」

「ぼく、何で、そうならないんですか?」

「頸椎の神経に損傷が少ないのではないかと思う。」

「神経ですか。」

「首の骨の後ろに、全身へ意思を伝達する全神経が走っていて、それを少しでも傷つけるとダメなのよ。呼吸神経を傷つけると息ができなくて死ぬしね。手や足の神経を傷つけると手足が動かなくなる。」

「ぼくは、神経を傷つけてないんですか」

「いや、いくらなんでも、こんなに折ってるんだから傷つけていると思いますよ。いま出てなくても、このままだと、いずれ傷つけますね。」

「どうすれば、いいんですか?」

「とりあえず、これから簡単な、手術をします。」

第5頸椎脱臼骨折の写真 1

 首の骨の上から5番目の骨が、他の骨のように四角くなくて動物の爪が飛びだしているようになっているのが骨折場所。衝撃で第5頸椎が割れて破片が前に飛びだし骨が変形してしまっているそうだ。もっと激しく折れているのかと思ったが、よく見ないと分からないじゃん。と思っていたが、説明してもらうと、これは十分激しく折れているそうだ。下の写真のように説明してもらうと現在の深刻さがよく分かった。

第5頸椎脱臼骨折の写真 2

「ふつう、首の骨はなめらかに曲がっているが、ほぼ真っ直ぐにつながっている。しかし、この写真は前と後ろの線を見てみると、第5頸椎でとぎれ、第5頸椎は割れて一部が前に飛びだし牙のように全部を圧迫している。また、首の後ろのラインは第5頸椎が首の骨の列から外れ後ろに大きく脱臼をしている。さらに、大きく後ろにずれた場所は全神経が通っている場所で、写真では大きく神経に当たり傷つけているか、圧迫しているように見える。神経を傷つければ、全身麻痺か、死を免れない状況にあるという。下は、反対側の写真である。

第5頸椎脱臼骨折の写真 3

矢印の場所が骨折と脱臼した場所

第5頸椎脱臼骨折の写真 4

反対側も、やはり大きく骨折し脱臼している。

はたして、前後はどうなっているのだろう。

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