・ 永夜抄拾遺。


Stage 1 蛍火の行方

 蛍の灯りはいつもより激しく見えたのは気の所為か。
 今宵は永い夜になるだろう。



パチェ 『月光浴案内』……『楽しい山歩き』……
    『遭難時の心得』……それから『月世界旅行』

    やっぱり無いわ。……難儀なものね。
    どんなに備えても、不備は必ずでる。

    その理解があれば、忘れ物に落胆なんて
    しなくて済むはずなんだけど。


 ?  なになに? 何を忘れたの?


 闇に蠢く光の蟲
    リグル・ナイトバグ

  

リグル 『恐い虫の追い払い方』?

パチェ この周辺の地図。

リグル あらら。ところで、
    目の前の驚異は対策しなくて良いの?


パチェ 貴方、夏の虫ね?
    たしかに勝手に飛び込んでくるのね。

    食い詰めた書生に捕まえられる程度の虫に、
    注意を払う必要なんてない。


リグル ……酷い言い様じゃない。わかったわ。
    虫を呼ぶ夜明かりの怖さ、教えてあげる!



パチェ 闇夜を照らせるのは火だけではない。
    虫風情には文明なんて言葉は不要みたいね。

    もっとも。眩すぎる明かりは、
    自らを焦がしちゃうんだけど。

    でもこれは、貴方の方がよく知ってるかしら?




Stage 2 人間の消える道

 人間の通り道も、真夜中に出歩くものは獣か妖怪位。
 少なくとも人の姿が見える筈も無い。




   ?  ちょ、ちょっと待って〜!

  パチェ ……ちょうど、
      少し飛びつかれてきたところだけど。



 夜雀の怪
   ミスティア・ローレライ



ミスティア そこのお嬢さん。こんな夜更けに出歩くなんて、
      ずいぶんな恐いもの知らずね?


 パチェ  恐い物? それならたくさん知ってるわよ。
      物語には大事な要素。たいていは出てくるもの。

      イワシの頭、南天の実、アキレス腱や蒙古。
      古女房にまんじゅうでしょ? それから……


ミスティア あらあら。それじゃあ、
      夜に目が見えなくなるのなんて、恐くない?


 パチェ  恐くない。
      夜に盲いるより、文に盲いる方が恐いもの。


ミスティア 何いってるの? 目が見えなくなれば、
      文字だって読めなくなるじゃない。


 パチェ  そう……可哀想に。あなたは、
      その目でしか世界を見ることができないのね


ミスティア 何よ。
      わけわかんないことばっかり言う奴ね。

      不愉快だわ。こうなったら、
      視覚も聴覚もぜんぶ台無しにしてやるから!



 パチェ  あらゆる道具は肉体の延長線上にある。
      例えば、ハサミなんかは手の延長ね。

      ただ唯一、書物だけがその例外。
      目や脳ではなく、想像力の延長にあるのよ。




 Stage 3 歴史喰いの懐郷

 一車道の先には人間達が住む小さな里がある。
 だが里があるはずの場所には、何も、無かった。



 ?  お前か。
    こんな真夜中に里を襲おうとする奴は。


パチェ 里を襲うのに真夜中もなにもないと思うけど。
    昼日中ならいいの?


 ?  ダメに決まっている。
    私がいる限り、里の人々に手は出させない!


 ?  くそ、お前、なにもんだ?

パチェ そういう貴方は半人ね?


 ?  これ以上進むな。引き返せ。

 知識と歴史の半獣
      上白沢 慧音


 慧音 見ての通りだ。
    いずれにせよ、この先にはもう何もない。


パチェ 本当。何もなさ過ぎるほど何もない……。
    ……わかった。貴方、歴史を食べたのね?

    ワーハクタクなんて珍しいわ。少し待って。
    幻獣辞典の最新版なら持ってきてたはず……。


 慧音 なんと……! 貴様、この上で書痴か!
    嫌いなものの塊だ。無事に帰れると思うな!


パチェ え? 不思議な事をいうのね。
    (さっきは引き返せっていったのに?)

    歴史とは過去の記録。書物に触れる以外に、
    知る方法なんてないじゃない。


 慧音 歴史は私の中にある。私の血肉と化したものだ。
    書物など必要ではない。


パチェ 口伝が可能だとしても、書物として印刷されて
    頒布されれば、保存も伝達も容易になるわ。


 慧音 触れることのできない文面のみの記述など、
    どうあがいても贋作に過ぎまい。


パチェ それじゃあ貴方は、一度得た知識を、
    何のニュアンスも加えず語り続けられるの?

    伝達そのものは無機質で構わない。その知識を
    個々人が解釈した時、初めて文字は活字になる

    その意味で歴史も物語も本質的な違いはないわ
    だから、私は訳隔てなく接してるつもり――


 慧音 それがいかんのだ!

    虚実の境もなく貪る貴様らは、史実を
    空想と同様に解釈し、自分好みの形に改竄する

    歴史は過去の物。既に起きた出来事。現実だ。
    自らその姿を変えられない。

    歪められたそれらが人々に膾炙したその時、
    本来の歴史は忘れ去られ、死んでしまうんだ!


パチェ ……わからないでもないけど、
    歴史は『創られて』行くものよ。

    原初の歴史は神話だし、物語であり、
    民衆に広めるための情報操作でもあった。

    ハクタクである貴方なら解るでしょう?
    その発生からして恣意を受けずにはいられない

    それに、絶対的な客観視が不可能な以上、
    互いの解釈を比較しあうことで――


 慧音 うるさい! 黙れ黙れ黙れ!
    貴様の言はすべて侵略者の言い様だ!

    これ以上先に進ませるものか!
    幻想郷の歴史も人々も、私が守ってみせる!



パチェ 読むという行為は食事と一緒よ。文字を血肉に
    自分自身の一部にするためのもの。

    つまり『歴史喰い』は、
    貴方だけじゃなかったってことね


 慧音 うう、よりによってこんな奴に……。
    月さえ不完全じゃなければ……。


パチェ そうね。そのせいで妖怪の力が弱まっている。
    人間の力がないと、この先きっと厄介だわ。

    じゃあ約束よ。しばらく私に付き合って貰うわ
    そろそろ疲れてきたし。


 慧音 そんな約束、したっけ?

パチェ さあ? そういうものらしいけど。
    歴史喰い同士、力を貸してくれても良くない?




Stage 4 tit for tat 永い夜の一欠片

  竹は常に天辺を目指し伸び続ける。硬度と柔軟さを
  兼備するそれは、しかし一つの目的に向けられている。



魔理沙 動くと撃つ!

    間違えた。
    撃つと動くだ。私から動く。



 普通の黒魔法少女
      霧雨 魔理沙


魔理沙 っと、おいおい、
    珍しい夜に珍しい奴が飛んでるな?

パチェ ……まったく。貴方は、早すぎるか
    遅すぎるかのどっちかなんだから……。

 慧音 ?

魔理沙 なんだよ。私はいつだってちょうど良いぜ。
    私にとってな。


 慧音 そこの黒いの。ひょっとすると人間か?
    それならば退いてくれ。危害は加えない。


魔理沙 そういうお前らは妖怪じゃないか。
    素直に退いても面白くない。

    それに危害ならとっくに加えられている。
    永い夜に得する奴なんていない。


パチェ あら。夜長に読書は最適じゃない。
    月の明かりなら本も傷まないし。


魔理沙 お前が秋の夜にだけ読むのなら
    その言葉も認めてやる。

    それにお前から借りた本は全部読み終えた。
    今日の月にもとっくに飽きた。

    どうだ。お前らが、
    私の退屈に付き合わない理由はないだろ?


パチェ そう。
    読む本がないのは、確かに気の毒ね。


 慧音 まったく、変な夜だ。私の知る歴史にも、
    そうそうこんなことはないな。



魔理沙 さぁ、行くぜ!     何を企んでるかは明日になって聞いてやる!


 慧音 む。逃げたのか?

パチェ さあね。退屈が潰れきったから、
    補充にいったのかな?



 霊夢 そこまでよ!

    今まで誰の仕業かわからなかったけど、
    これではっきりしたわ!



 楽園の素敵な巫女
      博麗 霊夢



 霊夢 紅い霧のときもあんたが首謀者だったわよね。
    懲らしめ足りなかったのかしら?


 慧音 また人間……?

パチェ 違うわ。首謀者じゃない。
    本は自分からページをめくったりしないもの。


 霊夢 その割には、今日は珍しく
    図書館から出歩いてるじゃないの。


パチェ 本は読み手を写す鏡にもなるわ。それなら、
    鏡像が動いてもおかしくはない。


 霊夢 とにかく! 見慣れない共犯者まで連れ出して
    一体何を企んでるのよ!


 慧音 共犯者? 違う、私は……!

パチェ 企み事ならしてるけど。

 慧音 ちょっと待て、弁解ぐらいさせろ!

 霊夢 しても聞かないわよ。
    私の仕事は妖怪を懲らしめることだもの。

    朝は来ない、月は歪んでる。こんな夜を
    これ以上、長引かせるわけにはいかないわ


パチェ あなたも読む本がなくなったの?

 霊夢 何の話よ。そんなに読みたいなら、
    結界のすきまでゆっくり読むといいわ!

    さぁ、この瞬間が永い夜の終わりよ!



 慧音 まったく。一晩に二人も
    人間を相手取らなければならんとは……。


パチェ こっちも二人、あちらも二人。
    手伝いのおかげで、余計な手数が増えたのかな


 霊夢 二人ー?

魔理沙 くそ。永い夜だというのに、
    せっかちな奴らだぜ。


 霊夢 ああ、魔理沙! まったく、魔理沙は
    遅いか早いかのどっちかなんだから!


魔理沙 うう、ちょうどぴったりだぜ。

 慧音 問題解決に動いている人間がこんなに?
    私は里を守っているだけで良かったんじゃ…


パチェ ページを戻しても時間は戻らないわよ。さて。
    あそこがあなたのいう屋敷ね。




Stage 5 穢き世の美しき檻

「穢き所に、いかでか久しくおはせん。」
 そういうと閉ざされた扉は一枚残らず開き――



 ?  遅かったわね。

    全ての扉は封印したわ。
    もう、姫は連れ出せないでしょう?


パチェ ……気持ち悪い……。

 慧音 飛びながら本を読んだりするからだ。

パチェ ……ふらふらする廊下なんて
    読書に不要なものが、なんで存在するの……。


 慧音 ほら、しっかりしろ。
    屋敷の住人のお出迎えだぞ。



 狂気の月の兎
    鈴仙・U・イナバ



 鈴仙 あら? あなたはこの近くの里の。
    ウチの姫が間接的にお世話になってます。


 慧音 ああいや。こちらこそ。直接挨拶にも伺えず、
    非礼を重ねている。


 鈴仙 それで、本日の御用向きの程は?
    ただいま少々立て込んでおりまして

    姫も師匠も、せっかくのご足労に
    応えられないのですが。


 慧音 や。こんな夜半におじゃまする以上、それは
    心得ている。用があるのはこいつなんだが……


パチェ ……きもちわるい……。

 慧音 あー。もう。しっかりしろというのに。

 鈴仙 なんだか面倒な客がきたなあ。

 ?  こんなときにお客?

    なにしてるのよウドンゲ。
    早く用向きを聞いて、お帰り頂きなさい。


 鈴仙 ああ師匠。それが――。

パチェ ……ショウガのかけらか、南天の葉があれば
    わけてもらえないかしら……。


 ?  あら。酔い止めをご所望? ……そうね。
    人里に薬を分け与えるのもいいかもしれない。

    でもそれも、この件が片付いてからね。
    ウドンゲ。処方してあげて。ここは任せたわ。


 鈴仙 はい。お任せください。
    師匠はどうぞ、準備の方にご専念を。

    さて。それじゃあお薬だけど、要らないかもね
    この廊下は催眠廊下。私の仕業だから。


パチェ ……狂気と紅い眼は……つまり兎。
    兎と月。いびつな月。解ってきた気がする。

    とりあえず、酔い止めは借りておくわ。
    ただし、月は借りない。返して貰う。


 鈴仙 ……あら。変な客でも面倒な客でもなくて、
    迷惑な敵だったの?

    地に這う穢き民があの月を所有してたつもり?
    見上げるだけで手に触れたこともない癖に。


パチェ そうね。やっぱり貴方は月の住人なのね。

    でも、慧音と既知の仲だから、それも過去形。
    それから『姫は連れ出せない』て言ってたわね

    それと、扉の封印? ……わかってきたわ。
    月の異変と、貴方たちの目的が。


 鈴仙 ふん。だから何よ。
    解ったところで師匠の術に敵うはずもない。

    やっぱり酔い止めは不要ね。
    このまま狂い続けてもらうわ。

    貴方達は既に月の兎の罠で正気を失っている。
    私の目を見て、もっと狂うが良いわ!



 慧音 ……やれやれ。
    隣人に無礼は働きたくなかったんだがな。


 鈴仙 うう、術を知られた上に、勝負に負けて、
    師匠に怒られる〜。


パチェ 心配いらないわよ。
    貴方の師匠も、同じ目にあうもの。




Final 姫を隠す夜空の珠

 永い永い廊下。この廊下は何者かが見せる狂像か。
 近すぎる月の記憶は、妖怪には懐かしく、薄い物だった。



 ?  ふふふ。
    無事ついて来てるようね。


 慧音 招かれざる客と自覚しながらな。

パチェ ぶつぶつうるさい。
    どうせそろそろ終点よ。



パチェ ああ……! やっぱり。
    月が歪んでたわけじゃないのね。


 慧音 どういうことだ? 月に異変があるのは確かだ。
    現に、こんなに近いのに私の力が戻ってこない。


パチェ 歪められてたんじゃない。すり替えられてたの。
    あの月は偽物。幻影と呼ぶ方が正確かしら?


 ?  そう。その通り。

    貴方達は偽物の月が映した幻影の廊下に導かれ
    ここまで来た。


 月の頭脳
   八意 永琳


 永琳 付け加えるなら、
    私の術に惑わされて、ね。 


パチェ そうね。道標が紛い物ならばたどり着く場所も
    間違っている。ミスリードの燻製ニシンね。

    ただし、この密室に導きたかったのは
    私たちじゃくておそらく、――月の民ね?


 永琳 まあ!
    驚いたわ。そこまで見抜いてるなんて!

    地上人には月の民の存在すら
    知られてなかったと思うのに。


パチェ 私もついさっき知ったわよ。
    でも、地上が対象でないのなら、空しかない。


 永琳 そこまで解りながら罠にかかってくるなんて
    術師冥利に尽きるけど、正直ありがた迷惑ね。


パチェ ページを順に手繰ってっただけよ。

 慧音 (つまり相手の筋書きにまんまとはまったと
     いいたいのか?)

    話の行方がみえないが、とにかく、
    これでお前らの用事は済んだのだろう?

    地上人にもあの月は必要なものなんだ。
    どうにか、元に戻してはくれまいか。


 永琳 そうね。鍵をなくした月の民は、今頃、
    偽の地上を彷徨っているはず。

    朝にさえなれば、月は返してあげられるわ。
    といっても、元々私達のものだけどね。


 慧音 そうか。穏当に済むのなら結構なこと――

パチェ そうはいかないわ。

 慧音 ?

パチェ 月に住んでた癖に知らないの?
    満月は、次の夜にはもう欠けているのよ。

    さっきも言ったけど、もう一度言うわ。
    あの月は『返して』貰う。

    貴方達の都合なんて知ったことじゃない。
    どんな理由にせよ、今すぐ、即刻ね。


 永琳 ……あらあら。

    やっぱり地上人は穢らわしいわね。
    その言い方だと、まるで貴方個人の所有物だわ。


パチェ 私のじゃないわ。
    何にせよ、簒奪者には報復が必要。


 永琳 まったく、その迷妄を晴らすには、
    余程苦い気付け薬じゃないとダメでしょうね。

    いいわ。ここでなら存分に遊んであげられる。
    バカに付ける薬をゆっくり調合してあげるわ。


 慧音 ……気をつけろ。
    奴が持っている歴史は膨大な量だぞ。


パチェ そうね。歴史喰いの本領発揮ね。

 永琳 この弾幕の薬、夜明けまで避けきれるかしら?



 ?  何遊んでるのよ!

    永琳、私の力でもう一度だけチャンスをあげる。
    これで負けたらその時は……。

    そこの獣共!

    私の力で作られた薬と永琳の本当の力、
    一生忘れないものになるよ!





 夜の人里。
 久々の満月は、幻想郷を妖しく照らしていた。
 ここは迷いの竹林の外れにある小さな集落。妖怪の騒がしくなる
 満月の夜に、賢明な人々はひっそりと朝を待っている。
 ただ、確かに満月は戻ったのだが……。
 あの月の民の言う姫は、またどこかに隠れてしまった。


慧音 「どうだ? 満足したか?」
パチェ「……不満足。
    大したことは書いてないし。土蔵は土臭いし。
    湿気も多いし。紅茶もでない。珈琲もでない。」

慧音 「何を言っている。当然だ、そんなもの。」
パチェ「……大したことの書いてないことが?」
慧音 「それ以外全部!
    まったく。妖怪をこの里に入れるというだけでも最大限
    の譲歩だと云うのに。その上で史料まで見せてやって。
    割に合わん事この上ないな。
    お前がでていったら、その痕跡は残らず消してやる。」


パチェ「そうでもないわ。」
慧音 「何がだ。」
パチェ「大したことが書いてないのも当然。情報に貴賤はない。
    その情報を知ったもの個々人で価値が変わるだけ。
    私が知りたかったのはあの屋敷の歴史。
    ここに書いてあるのは、貴方達の里の歴史。
    私にとって大したことじゃないだけだわ。」

慧音 「……ふん。いくら私でも、
    私が生まれる前の歴史は知らんからな。」

パチェ「そうね。そんな人たちには大したものだと思うわ。
    ただ、私が不満なのは。」

慧音 「?」
パチェ「紅茶がでないこと。」
慧音 「……この上で茶坊主までやらされるのか。私は。」


  そう。情報は捉え方次第で無価値にも有価値にもなる。
 近隣の土地でさえあの屋敷の情報がないということは、
 彼らが意図的に隠れてきたということだ。
 あの月が偽物だということも、偽物にした目的もつかめてきた。
 あとは、奪い返すだけだ。
 パチュリーは、もう一度調査に出るつもりでいた。

NORMAL ENDING No.xx
再度このキャラでノーコンティニュークリアに挑戦してみよう!




  ページを順に手繰る(FinalA)
→ このへんで栞をはさむ(FinalB)



 慧音 さあ、追うぞ。
    出口もいい加減近いはずだ。


パチェ ……それもいいけど。ちょっと限界。
    あそこで少し休ませて……。


 慧音 ああ、こらこら。
    余所様のウチを勝手に歩くもんじゃない。


 鈴仙 しまった!
    まだ封印できてない扉があったのか!


パチェ タタミ……座敷……。
    ……縁側で読書とか、やってみたかったのよね。


 鈴仙 ああ、師匠に合わせる顔が無くなるぅ。



Final B 五つの難題

  解決不能な五つの難題。
  しかし、長い年月と幻想の力は、それらの問題を
  解くのに十分だった。




 永琳 ああもう。
    こっちに来させちゃ駄目だって言ってるのに。


 慧音 なんだ? こっちに何かあるのか?

パチェ ……ざぶとん……文机……文鎮……書見台……。


 慧音 これは……満月?

 ?  そう。満月。ただの満月よ。本当のね。

 慧音 だが、この光は?

 ?  地上からこの満月が消えてずいぶんになるわ。
    私もみるのは久しぶり。



 永遠と須臾の罪人
       蓬莱山 輝夜



 輝夜 昔はこの光が絶え間なく地上に注がれていた。
    魔法的な力は、殆どがこれを利用したものよ。

    気持ちいいでしょう?
    穢れのない、妖しい力に満ちた光。


 慧音 本当だ……。力が、力が溢れてくる!
    かつてない力が!


パチェ げほげほげほげほ。
    げーほ、げほげほげほ。


 慧音 って、おいおい。

    なんでお前さんの方が体調を崩してるんだ。
    半人の私より、ずっとこの光に近いくせに。


パチェ ……ぜー。……はー。力が流れ込んできて、
    急に心拍数があがったもんだから……。

    とにかく。そうね。私も文献で知ってるわ。
    いつか見てみたいと思ってたけど。

    地上から隔離することで穢れを払うなんて、
    ずいぶんな荒技ね。


 輝夜 そうね。でも、目的はそれじゃないわ。
    永琳の術は、私をここに隠すこと。

    あのこの術は完璧だわ。これで、
    地上からも月からも身を隠す事が出来る。

    ただ、いつも完璧すぎるわね。退屈なの。
    ここには誰も居ないし、誰も来ないわ。


パチェ ……ひとつ、確認したいことがあるわ。

    満月が力を失ったのと、幻想郷の成立は、
    時期がほぼ一致してる。

    つまり、貴方達がこうしたように
    幻想郷と外界はもうとっくに隔絶されている。

    それでもこの術を用いる必要があったの?

    例えば、毎日紅茶を飲んで暮らしている子の
    楽しみを邪魔してまで。


 慧音 ?

 輝夜 あら。私も永琳も鈴仙も、ずっとこの屋敷で
    暮らしてるから、外の様子は余り知らないの。

    でも、人を襲う意味を失った、訳の解らない
    生き物にさほど注意を向けなかったことは確かね


パチェ そう……。ずっと感じてた違和感の正体、
    やっと解った。

    これだけ大がかりな仕掛けなのに、
    首謀者の意志がみえない。

    それは意志がなかったからだわ。
    動いているのは従者だけ。つまり――

    ――貴方は、永遠を生きることに
    何の疑問も抱いてないのね?


 輝夜 ……。

    さあ、どうかしら?


パチェ そんな奴にあの月は渡せない。

    欠けて満ちてを繰り返すあの月は、
    夜の永さを慰めてくれる大切な玩具なのよ。


 慧音 よくわからんが、月を隠されたことで、
    迷惑を被った輩がたくさんいるのはたしかだ。

    つまるところ、お前の世間知らずが招いた災難だ
    どれ。ひとつ、私が外に引きずり出してやろう。


 輝夜 あら? ちょうどいいわね。
    問いかけを出して客人をもてなすのは私の役目。

    私を連れ出そうとする人にも難題を与えてきたわ。
    今まで何人も敗れ去っていった難題をね。


パチェ おあいにくさま。クイズは得意よ。
    カンニングしてよければ。


 慧音 前例がないなら都合がいい。
    私が歴史を創ってやる。


 輝夜 さて、貴方達に幾つ解けるかしら?



 輝夜 なんて事!
    そう、夜を止めていたのは……、
    貴方達だったのね。

    貴方達が作った半端な永遠の夜なんて……
    私の永遠を操る術で全て破って見せる。
    夜明けはすぐそこにあるはずよ。

    どう?
    これで永夜の術は破れて、夜は明ける!



   ――All Clear!




 夜の紅魔館
 幻想郷に本当の満月が戻ってきた。

「空間をいじくるのが好きな人」のいるこの館には、主とその友人
 しか立ち入ることの出来ないテラスがある。
 特別に設えられたそのテラスは、どんな刻限であろうとも、
 月が天心にあるよう位置取られる。

 かつて物質的な世界から袂を別った幻想郷は、より精神的な世界と
 なって今日もある。

 それは抽象化された意味が支配する世界であり、例えば吸血鬼は
「血のように紅い」紅茶や、「血のように紅い」月の明かりで
 栄養補給ができるようになっていた。

 本当の満月が映す純粋な狂気は、この館の主にとって
 滅多にないごちそうになったことだろう。


レミリア「……本当に、いい月ね。
     もしかするとあの異変も、この月になるための、
     一時的なものだったのかしら。

レミリア「ほっといたら結局勝手に直っちゃったし。
     何か出番を奪られたような妙な心地もするけど。

レミリア「あーあ。何処かに、私の代わりに異変の原因を
     調べてくれる知識人とかいないかしら。」

????「……呼ばれた気がする。」

レミリア「ふふ。パチェはいっつも丁度いいところに来るのね。
     ほら、きれいな満月よ。」

パチェ 「そうね。少なくとも、遅くも早くもないつもり。
     ……少しだけ大急ぎはしたけどね。」

レミリア「そうね。急ぐのは悪い事じゃないわ。
     月は常に欠け続けていることだし。
     たとえそれが、満ちる周期であってもね。」

パチェ 「つまり、丁度ぴったりって事ね」

パチェ 「知ってる? 本も、いつだって丁度ぴったりよ。
     本の中では時間は流れないもの。誰かの目に触れて、
     その目が文章を追っているときにだけ流れるの。」
パチェ 「だから、調べ物をしたければ、
     本はいつだって貴方のことを待ってる――」

レミリア「はいはい。解ってるわ。それ以上いわないで。それに、
     本なら私の代わりにパチェが読んでくれてるじゃない。」

パチェ 「そうね。丁度ぴったりのつもりよ」

レミリア「……あら? そういえば、珍しい。
     今日は本を持ってきてないのね。」

パチェ 「そうでもないわ。
     一番のお気に入りを読むつもりで来たから。」


 今回の件で、再認識したことがある。
 それは、人も書物も、ある一点で大差はないということだ。

 獣としてその内に膨大な歴史を収めた者や、永遠を生きる姫の説話
 に耳を傾けることと、書物を紐解き過去の記録に触れること。
 それらに、何の違いがあるだろうか?

 そう。書に触れなくとも、読書はできるのだ。

 であるが故に。その認識は、パチュリーの中で元来希薄だった、
 図書館から外に出歩く意味をより一層薄れさせた。

 皮膚感触含む記憶の蓄積はすべて、情報という意味では等価であり
 優れた書物は五感でさえ追体験させてくれるものだとパチュリーは
 知っていたのだ。

 問題があるとすれば、それらは書物と違い、読む為には出歩く必要
 があったり、読みたくもないときに勝手にやってくるところだが
 ……。
 今は、それらの諸々もどうでも良かった。

 今はただ、血のように紅い狂気を陶然と浴びる友人を――
 ――最もお気に入りの愛書を、やはり、陶然と眺め続けている。


GOOD ENDING No.xx
読んでくれてありがとう!


Result――。


・多分ぱゆりさんと上白沢さんは仲が悪い。てのを書きたかっただけでもありつつ。
・割とどでもいい(失礼)1・2ボスはともかく、後半のやや重要なキャラの掘り下げが全然できてないことにいざ書く段階に至って気付く。
・だって永のキャラにはあんまし思い入れが!

・ぱゆりさんのことをパチェと呼んで良いのはレミリア嬢だけーて信念を便宜上折ってみた。いやまあ名前表示のとこだけだけど。
・会話デモがそんなに長いはずがあるまい。と最初は気を使って切り詰めてたんだけど、あらためて本家を確認してみると思ってたよりずっと長くてじゃあそれでいいか。と開き直った。
・んだけど後半は長すぎ。
・しかも妄想中心。おかしいなあ当初はゲーム内容にゃ抵触しないようにと心がけてたのに。
・つまり単に手抜き二次創作になったてことですか?
・ところで結局「空間をいじくるのが好きな人」って誰? と云うか「どっち?」と聞く方が近いのか。どっちだろ。
・ぱゆりさんの弾の名前は「スプリングエフェメラル」だな。そんで着弾点で小規模な爆発を起こすいわゆるスプレッド型の弾なのよと妄想しつつキャラセレクト画面でもでっちあげようかなとか思ってたんだけど「××の××チーム」て名称が思い浮かばなかったので逃げ。

・当初は魔理沙さん単独で Ln 制覇。を遊びつつ妄想してた。で、ボス戦時の顔のカットインがぱゆりさんじゃなくて魔理沙さんが表示されてごく当たり前のことなのにびびってみたり。
・思いついたのは花がリリースされる前から。実際に書いて書き終えたのはおよそ2ヶ月前。HTMLにするのがめんどかったの!

・そんでこの後ぱゆりさんは肝試しにゃ行きませんでした。






・ 宵猫塔。


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