・ 宵待月黒猫塔。
 
 

・ 世界樹の命名。


 主人公の名前はフュージンにしようと決めたのだ。

 ちょっと前に、邦題「こねこ」というロシア映画をみた。
 作品そのものは、迷子になった仔猫がなんだかんだでお家にたどり着くという他愛のないものなのだけど、
 その毒にも薬にもならなさを圧して素晴らしかったのが、猫と、猫使いの演技だったのだ。

 猫てのは人に付くのではなく家に付く。基本は独りで暮らす生き物であり、
 その上で、生粋の狩猟者の血を持ってるから、人におもねり芸の報酬でもって餌を稼ぐなんて真似をする筈がない。
 己の主は己自身。自分より偉いヤツという概念なぞ存在さえしないのだから当然だ。

 それなのに。件の映画の猫と猫使いはそんな常識をひどくほのぼのと朗らかに容易くぶち破る。
「猫に芸をさせる映画」と書くと猫好きとしては眉をひそめざるを得ないのだけれども、しかし件の猫使いの演技は、
 厄介な猫共をただ従わせるのではなく、己を貶めるのでもなく、猫の中に溶けこみ己と猫との間の垣根をなくすことで、共に芸をする。
 そんな雰囲気の嫌味を感じさせない演技であり、なんというか、ほだされてしまった。
 うむ。スゲエ。猫好きほど驚くことの出来る映画なのではあるまいか。


 で。その猫使いの役名が「フュージン」だったので。敬意を表してお借りすることにした。
 世界樹の迷宮の主人公ってことは自ずとギルドリーダーを意味するので、
 人としての集団生活からの落伍者が――多少柔らかい言い方に直せば、個性派揃いの冒険者連中を束ねる立場として丁度良いように思えたのだ。

 というわけで。
 主人公はファーマーのフュージンてことで決定された。


フュージンくん。そいや羊の扱いはどうすんべ。

 それはひとまずおいといて。船の名前を考えとかないとなーと思っていた。
 船旅と限定するわけではないけれども。旅というものに対する所感として
「全ての旅は帰路で終わる。そしてこの、帰路に伴うさびしさと、たいくつと、あきらめこそが、人生というモノの本質である」
 なんぞという枯れたことを思ってたりしたのだけど。そこにルグィンばーさまの著作の背表紙が目に入った。その書名がステキでさ。

「オールウェイズ・カミングホーム」

 私たちは、いつも家路の途中にいる。
 スゲエ。かっこよすぎる。

 まあ、婆様の創作ではなく引用らしいのだけど。
 ともあれ感銘を覚えたので船の名前は「カミングホーム号」にでもしようかしらと思ったのだ。
 板を一枚隔てた先に地獄を敷き続けるのが船旅というものなのだから、家路を願うて意味では丁度良く感じるし。
 全てが家路。全ては旅。かっこいい。
 でもなー。
 いくらか消極的に過ぎるような気もする。

 という思考が先にあって。
 ところで、先の「こねこ」の主人公猫の名前は「チグラーシャ」という。ロシア語で「虎猫ちゃん」くらいの意味だそうな。
 書いたとおり、こねこて映画は迷子猫のチグラーシャが無事に帰るまでのお話で、カミングホームという語と一致する。
 ふむ。
 じゃあ、船の名前は「チグラーシャ号」かしら。


 うむ。上手にまとまった。様に思えるけど。
 地味ながらも看過しがたい問題が一つあって。
 主人公をファーマーにしようと決めたのとほぼ同時に、ヒロインはビーストキングにしようと決めていた。
 農場経営で放牧で家畜を守らねばならないファーマーと、それの害にしかならない野獣(ビースト)の王という組み合わせはミスマッチで何かとよろれいひ。


ヒロイン候補。このほそっこさがイイデスネ。
 で。主人公の名前を猫使いにしたのだから、せっかくだからギルドメンバー各員の名前は猫縛りにしたい。
 そこで、「チグラーシャ」という名前をそのビーストキングに付けたくなってしまった。
 主人公とヒロインなのだから、同じ作品からの引用という形で結びつきを強くしてしまいたくなったというか。
 虎猫ちゃんという凶暴さを丸めた響きが相応しいようにも思えるしなー。


 じゃあどうするか。と。
 ビーストキングの別名を考える方向で思考を進めると。最初に浮かんだのは「ハロウィン」という名前だった。

 思考の流れは、こう。
 猫の名前。猫作品。→ 猫の地球儀。→ クリスマス。→ ハロウィン。
 順に説明すれば、猫の地球儀てのは(儂が好きな小説を聞かれた際に必ず挙げる)名作 SF であり、
 クリスマスってのはそれの中に登場する真っ赤なツナギを来た、自分のことを猫だと勘違いしているらしい幼女ロボだ。
 12月に製造されたからそんな名前であるらしい。ステキ。
 でも、それをそのまんまに名を借りるのは少々はばかられるモノがあるので「クリスマス」に対応する祝祭としての単純な連想で「ハロウィン」と浮かんだのだ。

 ハロウィンは万聖節で、魔物を使役するビーストキングに相応しい名であるような気がするし、
 カボチャのランタンも農場というイメージに近そうで、なんとなく良くね?
 まあ問題はハロウィンは英語圏かつケルト圏の文化なので世界樹の世界観的にそれはどうか。て点と、
 やや猫から遠離ってしまうのと主人公との結びつき問題が関わってくるあたり。


 では、チグラーシャという名のビーストキングが居たとして。船の名前はどうするか。

 チグラーシャと聞いて連想する創作人物があった。
 レイ クドリャフカというアマチュアゲームの登場人(?)物で、 主人公のクドリャフカの相棒的立場として登場する猫娘が同じ名なのだ。

 ここで初めて気が付いたのだけど、クドリャフカてのは初めて宇宙に飛んだ実験動物の犬の名(とされているもの)で、
 地球への帰還を度外視されていた点でもって悲劇的英雄(?)象として捉えられていたりもする。
 そんでチグラーシャってのは先に書いたとおり、無事家路につくことが出来た猫だ。
 そういう対比でもって、クドリャフカとチグラーシャを並べていたのだなーと、今さらのように感心した。

 まあ、クドもチグもどちらもロシア名というだけの連想であってそんな対比は意図してのことじゃないかも知らんが。ともかく。


 それでは船の名はクドリャフカにしようか。と少し思った。
 犬の背に乗る猫ども。という図を連想させてやや面白。
 あと、世界樹3のサブタイトルである「星海の来訪者」て字面からなーんか宇宙に飛び出しそうな気もするので(ウィザードリィ的な展開も思って)、
 宇宙を連想させる名前の船ーてのももしかしたら良いかも知れない。と思ったのだ。

 けど帰ってこないんだよなークドリャフカ。不吉。
 まあそれはそれでアリかも知らんけども。


 船と言えば。世界樹3では「パイレーツ」という職業があるのだった。
 海を全面に押し出してきている感のある世界樹3なので、ならばパイレーツの登用は必須であろうと、使うことは確約されているのだけど、
 普通に考えるならば船の持ち主はそのパイレーツであるべきなので、じゃあそこから名前を考えるのもアリかしらとも思うのだ。

 で。ついこの間、「夏への扉」という名作 SF を読んだのだ。
 内容の紹介は省略するとして、そこでも猫というモチーフがたいへんに重要かつ面白く用いられていた。
 発売を間近にしての出会いだ。何かの縁と言うことでここからも借用したい。
 
 件の作品に登場したのは「ピート」という名前の猫だ。ピートてのは愛称でフルネームは護民官ペトロニウス。
 そのまんま借用しても構わないのだけど……件のピート氏は生真面目な性格で、想定している海賊とは微妙にイメージが合わない。
 しかしここで、氏の鳴き声に関する素敵な訳文が作中に飛びだした。

「アオウ、クムオーン(てやんでえ)!」

「てやんでえ」いいなあ。てやんでえ。
 ということでウチの海賊の名前は「クムオーン」ということで決定された。


クムオーン。少々名前ぽくない響きな気もするがまあ。
 それじゃあ、と。余った形になる「ペトロニウス」だけど、こちらの船の名前にするのもアリか知らん。
 私が読んだ訳では護民官とあって、直訳すると審判者的な意味合いになるらしく、
 公式で公開された動画では海賊船を撃沈してたりしたのでイメージともそう遠からざる気もする。


 とかで。案ばかり出てきて。結局まとまんない。
 案がでてこないのではなくてどの案を採用すべきか決めかねるという状態なので決着は付きにくいだろうなーという誰にも影響しない極めてインナースペースな悩みでした。


 余談。
 案が出てこないと言えば。バリスタの名前が決まってないんだよね。
 イメージとしては、大弓および大砲が好きで、それを好き勝手にいじくり放題に出来るからという理由で海賊に居た娘さんなのだけど。
 たぶん人嫌い。そのくせ自分の得物にはいちいち愛称を付けてこっそりそう呼んでいるという。
 SF から名前を借り続けてきたから、上記イメージ+ SF ということで、アシモフのロボットものに繁く登場する「キャルヴィン博士」の名前が浮かんだけど。
 ロボット心理学者であり、冷静沈着にして人嫌いなのだけどロボットへの理解と愛はやたらと深いとゆー。
 でも猫じゃないんだよな。
 ううむ。


名前はまだない。……という所から因んで漱石せんせの猫から貰うとか?
 余談その2。
 前作の世界樹2でも、猫に因んだ名前が主人公であった。
「ルバーブ」という名前で、ハリウッドで有名になった役者猫が演じた名前のうち一つ。
 今作の主人公も猫。
 でも1の主人公の名前は「ココノエ」で、ゲームを始めて名前入力欄が出たその時になって初めて決めたのであった。
(パラディンの名前。→ 堅そうな名前が良かろうな。→ 堅牢……重厚……九重。じゃあココノエでいいや)
 処刑道具に九尾の猫鞭てのがあるので。そこから因んでココノエってことにしても良いような気もするが、それだとパラディンてかダークハンターだよな。






・ Portal 2 が確定だそうで。


 わーい。

 上記動画は、こないだ唐突に行われた Portal のアップデート後に確認が出来るようになったエンディングだそうな。
 Portal て名前を知る人ならば既知の動画だろうけど、微かな機械音声とと、機械音とともにカメラが後退していく様を確認できる。
 つまり GLaDOS はまだ生きていた……てことになるのだろーか。

 それはそれとして。
 アップデートは、短い期間に続けて行われたそうな。それぞれアップデート内容は以下のように説明されている。

・ラジオ送信の周波数を、連邦及び州の周波数管理規定に合うように変更。
・価値ある素材の検索を追加。


 わかんねえ。さすがというか。

 具体的には、ゲーム中の各ステージにラジオが新しく追加され、
 そのラジオを特定の場所に持って行くと謎の電波を受信できるーて遊びと実績が追加されたそうな。
 受信して聴けるのは何やらよく解らない信号とノイズ。
 ……と、思いきや、これはそれぞれモールス信号と、アナログ通信に用いられる音声データてことがわかったそうで。
 じゃあそれを実際に解析していくと――。

 と。ここから追加されて判明してった要素がなんというか、狂気めいたものさえ感じさせる複雑さと発狂具合でやたらと面白く、
 もちろん私が解析したわけでもなければ、解析後のまとめを乗せた英文サイトの翻訳をしたわけでさえなく全て引用で借り物なのだけれども、
「わーい。狂ってるー」という感動を書き残しておく目的でもってそれら経過を引用しておこうと思う。


 経過そのもののまとめはこちらの英文サイトから。
 画像も全てこちらからお借りしております。


 で。件の謎音声だけど、はっきりとモールス信号だと解るのは4つ。以下。

・interior transmission active external data line active message digest active
・9e107d9d372bb6821bd91d3542a419d6
・system data dump active user backup active password backup active
・beep beeeep beep beep beeeep beeeep beeeep beep beeeep beep beep


 順に説明していくと、
 interior transmission active...... は、日本語に訳すと「内線:アクティブ 外線:アクティブ メッセージダイジェスト:アクティブ」となる。
 system data dump active......は、「システムデータ 出力:アクティブ ユーザー バックアップ:アクティブ パスワード バックアップ:アクティブ」
 これは後のヒントになる。

 で、もう一つの謎の数列。「9e107d9d372bb......」は、これは MD5 という一種の暗号データだ。
(MD5 てのは要するに、送信されたデータを受信して良いのか悪いのか認証、もしくは送信最中に欠損してないかどーかの確認に使われていた暗号みたいなモンだったんだけど、
 07年あたりに総当たり式に無理やり解読する方法がわかっちゃったので暗号としての価値は失われたそうな。
 伺かの更新にも用いられてたからなじみ深かったけど、見た目が特徴的だからピンとくる人は直ぐに解るんだろうねえ)
 これを解読すると「The quick brown fox jumps over the lazy dog.」と、なる。
 日本語に訳せば「すばしっこい茶色の狐はのろまな犬を飛び越える」なんだけど、コレはアルファベットを一文字ずつ重複の内容に使った文字遊びの一種。キーボードのテストや、フォントの一覧に使われたりするそうな。

 だからこの文字自体に意味はないのだけど、この MD5 を用いるという解読法も、後のヒントになる。
 ついでにいえば、直接関係があるのかは知らないけど無線の発信場所を探す遊びのことをフォックスハントなんて呼んだりもするそうな。

 「beep beeeep beep beep beeeep」は、二重にモールス信号になってて、アルファベットに直せば「lol」
 これは、英語圏で言うところの(笑)。ノイズなので除去しておきましょう。


 さて。残りのファイルはすべて SSTV という、画像を送信する際に用いられていた電波だそうな。
 それをデコードした結果に得られる画像が、コレ

 うーん。意味があるのやらないのやら。ノイズ混じりに不鮮明で不気味な画像は左上にアパチャー・サイエンスのロゴが確認できる。
 つまり、監視カメラの映像なのかな? ともあれ細かくみてくと、右下に 1/32 と番号が振られているのを確認できる。これらを拾い上げて並べてみると。

 「9459C6CAC8C203B8128B7CC63068D4FD」 (参照画像)
 これを、先ほど用いた MD5 で解析をした結果に得られるのは 「(425) 822-5251」という数列。

 ……電話番号? みたく思えるけど。
 この数列を得て、実際に電話をしたひとが居たかも知れないし、もしかするとそのひとは電話口から「ぴぴーががーぎゃりぎゃりぎゃり」という耳障りにもどこか懐かしいノイズを聴いたかも知れない。
 実際はどうだったか知らんけど。
 で。この数列の意味を指していたのが、先ほどの画像に確認できる「BBS: (■■■) ■■■-■■■■」という文字列。




 電話番号ぽい数列、それから BBS...... という表示。
 さる人がアナログモデムを引っ張りだしてきて、該当番号へダイヤルアップ接続を試してみたら、成功。
 MS-DOS の画面にも似た、「GLaDOS ver3.11」へのアクセスに成功したそうだ。


 ……アナログモデムまで用意させるかよ。ここがこれまでの謎かけのハイライトといって良い部分ではあるまいか。
 ちなんでこの、GLaDOS の、古いバージョンであれば現時点からでもアクセスできる。
 ココがそれ。音が流れるので注意ね。
 URL をみたら解るとおり、アパチャー・サイエンス社の公式サイト(という設定の場所)みたい。
 少し遊んでみたければ、最初の画面で「LOGIN」と入力。USERNAME は適当でよし。PASSWORD は「PORTAL」と入力しよう。
 したらば、尚もコマンドの入力を求められるので色々試してみるといい。
 オススメは「APPLY.EXE」。Portal 本編のあのテストの被験者として相応しいか否かの心理テストが実行されます。
 ちなんで翻訳はここを参照しよう。実際に受けない人も、目を通しておくのがオススメだ。


 で。さすがに自分じゃ件のサイトへのアクセスは試してないのだけど(そもそもアナログモデムがないし)、
 恐らくは上記サイトに似た雰囲気だったのだろう。求められたユーザー名とパスワードへの回答は既に答えが出ている。
 即ち「ユーザー バックアップ:アクティブ パスワード バックアップ:アクティブ」がそれで、
 つまりは USERNAME:backup PASSWORD:backup となる。舐めとんのかい。

 そうして得られるのが次のアスキーアートや文書だ。

 1.  2.  3.

 これらは、Portal のバックグラウンドとなる設定を覗かせるモノや、同社の看板 FPS である ハーフライフにも通じる裏設定、
 そんで次回作 Portal2 に含まれる要素をほんのりとほのめかす画像――GLaDOS、タレット、手を繋ぎ合うロボット――等々で、
 正直、よくわからん。
 

 手を変え品を変え、場所と対象を変えて何度も呟かれてきた陳腐な台詞だけれども、言わずには居られない。
 こんな謎かけを用意する方も用意する方だけど、解く方も解く方だ。

 しかし、アナログモデムまでも引っ張り出して、アクセスに成功した瞬間のその人の興奮を思うに、
 楽しかったろうなあこんちくしょう。羨ましいぜ。てのが、素直な感想なのでありました。






・ 図書館徒事。


 図書館に収められている本にはそれぞれ居場所がある。

 単に利用者が希望の本を探しやすいよう分類されているという意味でもあるのだけど、
 それ以上に厳密な意味で、住所とでも言うべき分類番号でもって、正確に、
 どの場所の、どの棚の、どの本とどの本の間だにあるべきかが定められてたりする。

 書物ってーのは人の興味とそれへの回答の結晶体。もしくは新たな疑問の呼び代。
 それらがどっさり詰まれた図書館てーのはつまり、人の意識が質量を伴って世の中に現れた形であって、
 複雑怪奇にして深淵で混迷。
 四角い図体が四角い棚に納められ四角い背表紙を晒し四角い空間に見た目ばかりは整然と並んでる癖に、
 厳密に区分しなけりゃその混沌に翻弄され呑み込まれるばかりで目当ての一冊を探すどころじゃありません。

 ので、きっちり分類されてる。
 だから探す分にはあんま苦労しないのだけど。
 でも世の中は全て作用と反作用から成立しているので、
 探す際の、取り出す際の労力を和らげたらば片付ける際の労力が増加してしまう。
「正しい場所」が生まれたらばそれと同時に「間違った場所」が生まれるのである。

 何が言いたいかというと、所定の場所に指定の本を取りに向かって、然るべき場所になかった時の、
 しらみつぶしに本棚を走査せねばならん事態に陥った際の神経の削れ具合がしんどいんですという話。

 しかもその本が
奇跡の超「右脳」開運法―ツキを呼び込む絶対法則!
 だったときのうんざり感。

 書物に貴賤無し。
 しかも通読したことのない本を印象でもってのみ語るのは明らかに間違っているのだろう。
 ……でもなあ。
 右脳。脳トレですか。
 まあな。
「右脳と左脳でそんな単純に分けて考えるのも良くないんじゃねーの?」とする風潮が専門家さんのあいだで主流になり始めてるなんて聞いたことがあるけど、
 それでもまあ、右脳を鍛えましょうと宣伝するのは、キャッチーで記号的て意味で広報戦略的観点でもって間違っちゃ無い気がする。
 それに、日々の生活に鍛錬て概念を持ち込むのは有用なことよね。日常に積極的に介入して惰性を廃し、意欲的で充実した日々を。
 うん。
 けども。
 それに「開運」まで重なっちゃうとなあ。
 運ってのは人力では左右しがたいからこそ運なのであって、
 自己鍛錬なイメージの脳トレ的惹句である右脳て文字とは微妙に食い合わせが悪い気がするんですが。
「奇跡」の「超」「右脳」「開運法」――「ツキを呼び込む」「絶対」「法則」ですか。
 光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士を連想させますが。

 とはいえ。書物に貴賤無し。
 読みたいと願う人がいるなら出納に向かうさ。そして所定の場所になかったら根気よく探すさ。

 で。該当書物の分類番号は「159」である。
 この分類番号は日本十進分類法と呼ばれてるモノで、書物のジャンルを三桁の数字で表してみようという分類法。
 まずは百の桁で0から9までの十個に分けて、そこから十の桁・一の桁と細分化していき、
 場合によってはそこから更に小数点でもってさらに細かく分類する。
 でで。「159」てのは、100で哲学。150で哲学の中の倫理・道徳。で、159で教訓・処世法・人生論・成功法となるわけで、
 この場合はおそらく「成功法」に区分されたんだろうね。

 159 の本が収められている棚は、ある種の「偏った良識」を持つ人間ならば誰しもがその背表紙の群れにウンザリできるはず。
 社会的な正攻法を書いた本。159 の本で有名所をあげればー。ホラ。あれだ。
「チーズはどこへ消えたの?」だとか「小さなことでクヨクヨするな!」だとか「金持ち父さん貧乏父さん」だとか、なんというかあの辺である。
 虱潰しに探すとなればそれら背表紙を余さず通読せねばならないわけで、なんだろう。ずんずんと世を儚みたくなってくる。

 それでも見付からない場合は、小数点以下の 159.2 やら 159.6 とかにも順次探索の範囲を広げて。
 それでも見付からなければ 195 とか 156 とか配架する際に間違いやすそうな場所を探して。
 それでも見付からないから――この本の著者さんは七田真さんだそうで。「七田式」という看板でもって色んな右脳活用法を多く著述されているそうだ。
 てことは、背表紙が似通っている本が多くある可能性がある。本を所定の場所に戻すのは主に人力でもって行うので、
 うっかりミスでそれら違う分類だけども見た目は似てる本をひとつかみでがしりと同じ棚に間違って入れちゃう可能性も考えられる。
 てことで七田真の名前で書庫検索を行ってそれっぽい場所を調べていくけど……右脳開発って応用範囲が広いのなー。
「小学生からの七田式天才脳の育てかた」ならば教育で 371 だし、
「赤ちゃんの未来がひらける「新しい胎教」なら胎児から子育てははじまっている」なら育児で 599 だし成功を約束する「統合脳」開発トレーニング」なら社会医学で 498 だし「超右脳なりきり英語マスターBOOK」なら言語学は英語で 830 だし――。
 う、うおおおおお。

 もちろん見付かりませんでした。請求された方には大変申し訳のないことだけど。
 なんだろう。自発的市中引き回しの刑て感じの疲労感と徒労感。
 あと、極々個人的にあまり興味が沸かない本と言うだけで、著者の七田真さんを悪く言うつもりはまったくありませんご冥福をお祈りいたします。


 余談。
 その日のウチに、もう一冊、行方不明の本が出ちゃって、そっちは「うどんの絵本」でした。
 児童図書で、もちろん児童課さんからの請求だ。
 同じ必死に探すでも質の違う必死さで探したねーなんつったってガキからの請求だしー。
 なんだろうこの休日を利用してご家族とうどんを捏ねるつもりなのかしらだったらばがっかりさせる訳にはいかねェーという気迫と、
 うどんの作り方を知りたくてこの本を求めているのならばなおのこと。
 だってここで見付けて正しい饂飩製造法を学ばなければ、もしかするとそのコは
「うどんは木から採るモノで香川県はこのうどんの木がみっしりは植えてあるんだよー」なんて誤解をしたまま成長するかも知れないじゃないですか。

 そっちはなんとか見付けた。






・ データをCDに焼いて、中身を全部書くのが面倒くさくってその時の自分にしか分からない略語を使うみたいな

 みたいな。
 シレンで未鑑定の杖に適当な名前付けて再開後に後悔するみたいな。
 しかも保存の壺の中身がその妙な名前の杖でぎっしりで後悔通り越して一瞬ぞっとするみたいな。
(比較的メジャーなゲームでは有ろうけども一般教養のように語るのはよしましょう)



・ 行ってまいりました!
 橋のたびにその高さまでらせんの坂道をしんどい思いをしてのぼり、対岸に着いたら気持ちよくくだり。の、繰り返し。
 くだる気持ちよさは言うに及ばず、のぼり坂では天沢聖司氏を尊敬するに至りました。
 因島で海をながめて立っている恐竜のモニュメントが印象的です。
 尾道は坂と海と猫の街と思い込んでいましたが帰る直前におひとりてくてくと倉庫前をゆくにゃんこさんをお見かけしたのみにとどまりました。
 次回こそは、こっそりくんさきを。自分の非常食用も、兼ねて。ありがとうございました。


 おー。堪能してきたよーやねー。羨ましい。
 らせんの坂道というあたりが特に旅情を誘われるぜ。

 尾道の猫かー。私は結構みたけどなー。
 尾道は猫で坂で神社で猫で海と魚で猫でやたらといい町よな。あとは石段と踏切。
 もちろん猫毎に違うけども、人なつっこいのが多かった。
 艮神社とゆー神社が、神社らしい清明な雰囲気で、なおかつジャリガキどもが注連縄の張られた神木付近で鬼ごっこしてて、
 なおかつ生まれたばっかの仔猫の世話をしつつ寝そべってる外猫で、しかもその上で不思議な静けさが損なわれていないというなにこれなにこれ世の中にこんなおれをここまで喜ばせてくれる空間があっていいのどうなの許されるのとか歓喜の発狂寸前にまで追いやられた記憶が。

 ……もう一回いこ。しまなみ海道めぐりついでにもう一度だな。






web拍手。"


・ 管理室。


・


・ ナナドラ特設。


・


窓辺。