「桃源郷クラブ」普通の山岳会とは少し毛色の違うこの名前は、沢登りの好きな人達がパートナーを求めて集まった沢登り同人の仲間内での呼び名だった。
前年春、同人の連絡役をしていた筆者の所属する山岳会が急激な会員の減少から存続不能となり、残された数名が新しいクラブのあり方を考えた。方向性のはっきりした登山を行い、こころざしを同じくする大切なパートナーを増やして行く目標を持って、今までの沢登り同人を元に新たな加入者や移籍者とともに「桃源郷クラブ」として日本勤労者山岳連盟に加盟する事になったのである。
桃源郷とは人の心の内、魂の奥底にある精神的なぐさめと言われており、陶淵明の「桃花源記」を出処にしたこの名前を渓を登り魚を捕えながら山頂に至る山行に魂の平穏を求める私達の心を表わす言葉として使わせていただいた。
緑したたる、雪に覆われる、日本の山が大好きな私達は、我が国の気候風土の中で培われてきた山登りを求めて素晴らしい自然の中に身を置き、登頂や難易度にこだわらない登山を目指している。沢登りや雪山を中心にしているが、長距離縦走や登攀も行い、会員の能力を平均的に高め誰とでもパーティーを組み自分の目指す山行を事故無く行えるように実力向上を目指している。この事が「自由で創造的な登山と事故の無い山行き」につながると思っている。また平和で安全なはずの自然環境が各地で脅かされているのでその知識を増やしクラブ全員で考えて行きたい。
会員の平均年齢は44歳、8人全員定職を持った勤労者なので現在の労働環境では会員揃っての練習山行が難しいのが悩みである。
私達の西中国山地は、米軍機の超低空飛行の爆音に悩まされる事があるものの、自然がいっぱいの沢や山があり、冬季2m以上の積雪を歩きブナの新緑から秋の紅葉まで素晴らしい四季を楽しむ事ができる。また花崗岩のクライミングエリアとして知られる三倉岳は車で30分の距離である。 桃源郷クラブは、この西中国山地の恵みの中で新たな登山を実践して行くために力を結集した。皆さまも西中国山地にいちどおいで下さい。
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