D0とかD1とかのバランス、このままでいい?   2018.1.18

バランス(スイングウェイト)という指標があります。全てのクラブがD0以上になっていないといけないとか、アイアンは全部バランスが同じでないといけないという固定観念がありますが、これはいろんな事実を考え合わせると修正した方がよいとわかります。

(1)PWまでは同じバランスで、AWとSWはバランスが重く(大きく)なっている
 これは少し考えると違和感があると思います。特にSWはコントロールショットが多いのでバランスは軽くするべきでしょうけど、逆に重くなるとは。また海外ブランドのアイアンの中にはPWのバランスが他のアイアンより重いというケースもあります。

(2)ウェイトフローシャフトという存在
 ロングアイアンのシャフトは軽く、ショートアイアンやウエッジは重く、というウェイトフローシャフトが最近出てきましたが、なぜこういうシャフトがあるんでしょうか。全番手同じ重量のシャフトが一般的ですが、これではロングアイアンのシャフトは重すぎる(重いと硬すぎにもなる)という裏返しじゃないでしょうか。逆に考えるとウエッジのシャフトは現状では軽すぎるためにバランスを増やして辻褄を合わせているということにならないでしょうか。

(3)クラブ全体の慣性モーメントとの整合性
 近年「クラブ全体の慣性モーメント」が測定できるようになりましたが、バランスという値が目指していたのはここではないかと思います。つまり振り心地のよいクラブを作るという意味合いです。軽すぎるクラブ、重すぎるクラブは極端であれば簡単にわかりますが、そこまで感じなくてもミスショットが多いクラブは微妙に軽いとか微妙に重いとか疑う必要があります。
 クラブ全体の慣性モーメントが意味するところはクラブの動かしにくさで、まさに振り心地が軽いか重いか、です。アイアンを全部同じ数字に(できれば得意クラブの数字に)合わせて組み立てると、おそらく振り心地が全クラブ同じ感じになります。これを振ると元のクラブの方が振りやすいという人(特にコントロールショットが苦手な人)はあまりいないでしょう。
 このアイアンセットのバランスを測るとほぼ0.5ずつフローします。5番D0、6番D0.5、7番D1、8番D1.5、9番D2、PWD2.5、という風にです。ではAWはいくつがいいかというと、PWより0.5インチ短ければD3がいいんじゃないでしょうか。

この(1)から(3)までの事実を考えると、同じ重量のシャフトを使ってアイアンセット内のバランスを同じにする意義って何だろうと思いますよね。ではなぜバランスをフローさせないのでしょうか。

理由その1、バランスをフローさせたクラブは売れないとメーカーが考えているからでしょう。事実PINGからGMAXというバランスフローのアイアンが出た時、上級者からは非常に懐疑的なコメントが寄せられました。おそらく売れ行きが悪くPINGもその後バランスフローをやめてしまいました。

理由その2、上級者にとって現在のバランス設定は都合がいいからです。この設定だと長いクラブは振り心地が重くなり、それに合うように振れば飛距離が出ます。短いクラブは振り心地が軽く、それに合うように振れば飛距離が抑えられます。バランスをフローさせたら少なくとも最大飛距離は落ちると思いますが、これは特にヘッドスピードが出ない百叩きゴルファーにとっては振りすぎなくてもナイスショットが打てるという点でメリットがはるかに上回ります。


クラブの重量フロー、このままでいい?

次に、クラブセッティングの肝とされている重量フローですが、これも実は上級者向けの方法論が幅をきかせていますので、百叩きの我々は違った方法がはまる可能性があります。もちろん今までの方法論で問題ない人はそれでいいので、無理強いはしません。

重量フローはメーカーのカタログを見ると、ウッドでは0.5インチにつき5g刻み、アイアンは0.5インチにつき7g刻み、となっています。このようにフローさせるとバランスが各番手でほぼ同じになります。バランスをフローさせた方がよいと考える方はこの数字は使ってはいけません。

アメリカのGolfsmith社は数年前にアイアンの8g刻みを提唱し、実際にそういうヘッドを作り販売しました。理由はこの長さ/重量フローだとクラブ全体の慣性モーメントがほぼ同じになり振りやすくなるということです。クラブ全体の慣性モーメントとはざっくり言うとクラブを振るのにどのくらい力が必要か、の指標です。

7gフローだとクラブ全体の慣性モーメントが長いクラブほど高くなりますので、振るのによりたくさんのエネルギーが必要になります。ロングアイアンは振りにくい、フェースが開いて当たる(つまり振り遅れている)というのはこれが原因の大半です。

厳密に言うとクラブ全体の慣性モーメントが同じであっても、クラブ重量が軽いクラブと重いクラブは振り心地がちょっと違うかもしれません。シャフトのフレックスによっても違いが出るでしょう(柔らかいシャフトは許容範囲が大きい)。

なので長いクラブと短いクラブを完全に同じ値の慣性モーメントにするのはまだ議論の余地がありますし、実際ウッド系はアイアンより高い慣性モーメント値に設定しています。しかしせめてアイアンのセット内で統一することで恩恵を受けるゴルファーは相当数いるでしょう。特に長いクラブがスライス、ウエッジはトップしたり引っかけたりするゴルファーは。

クラブの全長と総重量をグラフにして、それが一直線になっていればOK、という方法論もありますが、実は一直線になっていればOKというわけではないのがおわかりでしょうか。ウッド系が5g刻みになっている以上ウッドからアイアンまで一直線になることはあり得ません。アイアンセット内だけに限ったとしても、5g刻みでも10g刻みでもセット内は一直線になります。

で結論ですが、現在のバランス一定セッティングで全番手うまく打ててミスの傾向も同じという方は現状でもちろんOKです。そうではなく長いクラブと短いクラブでミスの傾向が違う、悩めるゴルファーの方々はぜひとも重量フローを見直すことをお勧めします。