フィアット500ツインエアPOP(2011年型、5速AT) 2011.8.27納車
2013年2月中ごろに手放すまでの約1年半の間活躍してくれました。ブログに綴った連載をすべて載せると膨大な量になりますので、このたびからまとめをホームページに書きたいと思います。
(1)内外装デザイン
まずこの車の最大の特徴としてかわいらしいデザインが挙げられます。女性受けはもちろんですが、おっさんも結構コロリとやられてしまうようです。車体価格が軽自動車の倍するので若い女性はなかなか買うことができませんし、おっさんが乗ることが多いのも仕方ないでしょうか。
難を言えばボディカラーの選択が少なすぎます。イギリス仕様のカタログを見ると15色もあり、黄色やピンク、紫なども選択できるのですが、日本の場合私が購入した2011年では1.2で6色(白2色、赤2色、グレー、黒)、ツインエアで7色(水色が加わる)と結構寂しいです。
内装色も選択肢が狭いです。私の購入した頃は素晴らしい赤内装(シートだけでなくドアトリムも赤になる!)を選ぶとボディカラーは白か濃い目の赤かグレーに限られました。その他のボディカラーでは黒に近いグレーが基調の内装となりましたし、ラウンジという上級グレードでは全て無難な色の内装になってしまいました。イギリス仕様はもう少し選択肢が広く、茶色内装というのもあります。
私は実は当初ツインエアPOPの水色が欲しいと思っていたのですが在庫がなく次回輸入時期は未定という状況で、仕方なく白にしたのですが、赤内装になると知ってこれはむしろ水色を選ばなくてよかったと思いました。このフィアット500という車はパンダをベースとしたスペシャルな車ですから、ボディカラーと内装色を合わせるくらいはしてもよかったはずです。
(2)装備
装備についてはPOPでも必要十分という感じで、パワーウインドウ、リモコンドアロック、燃費計付きメーター、MP3対応CDプレーヤー、エアバッグ、ABS、トラクションコントロール、ヒルホールド、アイドリングストップと満載です。タイヤは175/65-14のスチールで14インチアルミの設定はオプションにもありません。
ラウンジになると装備はさらに増え、オートエアコン(ツインエアのみかも)、185/55-15タイヤ+アルミホイール、ガラスルーフ、クローム仕上げキットなどが加わります。私はホイールは小さい方が乗り心地がいいので好きですが、大きい方が好きな人の方が多いとするならこれでいいのでしょう。私にとってはラウンジは必要ない装備ばかり付いて内装は好みでなくなり値段だけ高くなるというシロモノでした。エアコンもマニュアルの方が好きですし(アルファ147のオートエアコンは嫌いです)。
トリップコンピューターは2000年くらいから変化がないようで、外気温度計と燃費計があるのはいいのですが欲しい情報がボタンを数回押して切り替えないと見られませんので困ります。たとえば燃費はトリップメーター(できれば平均時速も)と一緒に見たいところですが、一度には見られません。私としては時計、オドメーター(新車時からの走行距離)、トリップメーター、燃費は最小限同時に表示してほしいと思います。ボタンを1回押すと時計、オドメーター、トリップメーター、外気温度計が表示され、もう一度押すと時計、トリップメーター、平均時速、燃費が表示されると完璧です。
(3)座ってみて
シートに腰掛けるとハンドルが遠いのが気になりますので、テレスコピックステアリングはほしかったです。私はシートを立ち気味にしていますが、それでもぎりぎりです。シートの高さについては結構高めで、いやだという人も多いようですが私は大好きです。
この車はデザイン重視なので3ドアになっています。ドアが大きめで乗り降りがちょっとしにくいというのは仕方ありません。
また前席のシートの背もたれを倒してもスペースがほとんどできないので、スーパーの買い物袋を後席に置くのも一苦労です。チャイルドシートに子供を乗せてシートベルトを締めるのは背中がつりそうになります。前席は前にスライドするのですがそれもちょっと不便です。
(4)エンジン
エンジンは1200の4気筒か900の2気筒(ツインエア)を選べます。1200ccはやや薄味に感じる人がいるかもしれませんし、エンジンの面白さを味わうにはMTで乗るべきかなと思います。もちろん静かな方がいいという方は断然こちらです。
ツインエアはおそらく現在では世界で唯一の2気筒エンジンで、バイクのエンジンを思わせる鼓動感が特徴です。発進時ゆっくりアクセルを開けていくと1500回転前後でいい感じの鼓動感がありますが、これは結構好き嫌いがあって(イタリア車大好きという人たちでも意見が分かれます)、嫌いな人には不快な振動としか感じられないかもしれません。実際このエンジンはMTで乗るべきで、そうすると2000回転以下の不快な振動をスキップできると主張する方々はいらっしゃいます。逆にMTで乗るとこの回転あたりでクラッチをつなぐのが難しいようで、鼓動感が好きな人はデュアロジックの方が適していると思います。
この低回転を抜けると2000回転以上はスムーズです。私としては2000回転以上はパワーがあるのはいいのですが、フィーリング面では1200ccの方が好きかなと思います。4000回転を超えるとスムーズさは失われてちょっとゴリゴリしたいい感じがあったはずですが、最後の半年はそんなに回転を上げなかったので忘れてしまいました。私はほとんど3000回転以下しか使いませんでした。
ECOモードにするとパワーが落ちてシフトアップのタイミングが早くなります。加速は落ちますが私は十分だと思いました。普通に発進すると2200回転あたりで2速に上がり1500回転くらいに落ちます。アクセルを少し深く踏むともう少し高い回転数でシフトアップするようになりますし、加速も十分早くなるので私はいいのですが、これでは遅すぎるという人は多いでしょう。でもノーマルモードだとエンジンが回りたがってせかされるような感じがするので、まったりと走りたい私はECOモードばかり使っていました。
高速を走ると100km/hでだいたい2600回転くらいになります。1200ccの2代目パンダさんよりは静かだったはずです。しかし95km/hくらいで走るとエンジンが結構ぶるぶるとなりまして、発進時のぶるぶると違ってかなり不快です。100km/hちょっとくらいで走るのが快適です。車体の安定性も上々です。
(5)デュアロジックというトランスミッション(変速機)
トランスミッションはデュアロジックというセミオートマですが、変速ショックはかなり大きく20年前のオートマのようです。この変速ショックは加速する時は1速から2速に上がる時だけ気になりますが、その他はそれほど気になりません。一方で減速する際にはフットブレーキで速度を落とすとすぐにギアが落ちますので、変速ショックとエンジンブレーキが組み合わさり、しかも思った以上に減速してしまうことになります。実際は言葉にするよりは軽度ではありますが、こういう感覚のずれは気になる人にはきついでしょう(私も含めて)。
ただデュアロジックの利点として、基本部分はMT(マニュアルトランスミッション)と共通していて(ギアもクラッチも普通にある)MTの製造設備が使えるということ(コストダウンにつながる?)、ダイレクト感があり運転の楽しみがトルコンATやCVTより大きいということもあります。デュアロジック(セレスピードも同じ構造)大好きというイタリア車乗りは多いです。
あと隠れた利点として、クリープがないので(デメリットにもなりますが)停止したらすぐにサイドブレーキを引いて右足をフリーにできます。発進時はギアを変えることもなくアクセルを踏むだけというのはいいです。実は後述するようにスタート&ストップがONになっているとできないことなのですが。
私にとっての大きな問題点はECOモードの時の変速制御でした。早めにシフトアップしてぶるぶるというフィーリングが味わえるのはいいのですが、60km/hくらいで5速にシフトアップして、少し速度が落ちても4速にダウンしてくれず、1200回転を切りぶるぶるどころかガクガクしてしまい、これはさすがに不快です。手動でシフトダウンしたら学習して次回からガクガクする前にシフトダウンしてほしいものです。
もう一つ、坂道での変速はかなり課題が残っています。アップダウンが多いとマニュアルモードにしたくなります。傾斜を感知したら平地より1-2速分低めのギアで走る制御にして、手動で変速したらそのタイミングを学習するようにすればいいです。「もっと早めにシフトダウンすればいいのですね、ご主人様」と言ってほしいです。
それからこれはデュアロジの問題なのかわかりませんが、バックギアでちょっとアクセルを踏むと妙に加速すること(単純にギア比の問題か)、渋滞した道で止まりそうな速度でアクセルを踏まずに惰性で流していると急に加速すること、これらは結構怖いです。
(6)乗り心地とハンドリング
乗り心地については私は合格点を出します。ミシュランエナジーセイバーを履かせたデミオと同じ位の満足度で、確かに舗装状態の悪い道で40km/hくらいで走るとかなり揺れるのですが不思議と不快ではありません。サスペンションが柔らかめで予想に反した動きをしないのがいいのかなと想像します。ただ購入当初は舗装状態が悪いところでの乗り心地が悪いと思っていましたが、おそらく半年とか1年とかでサスがなじんだのか満足できるようになりました。タイヤは新車装着時のグッドイヤーDuroGrip(ポーランド製)ですが大きな不満はありませんでした。できればミシュランやピレリに換えて乗り心地の変化を体感したかったです。
ハンドリングについては私は攻めるような走りをしないのですが、ぐにゃりという手ごたえもなく意のままに動きますので大好きです。ただしECOモードの際の軽すぎるパワステだけは何とかしてほしいです。この軽さは結構気持ち悪く、次第に慣れたもののなぜこういう設定にするのか疑問です。ノーマルモードで車庫入れをしても重すぎると感じる人はいるものでしょうか。
(7)燃費
燃費としては10・15モードで21.5km/hと驚異的なカタログデータですが、私の経験では高速道路を延々と100km/hで走れた場合にその値に近くなります。信号がほとんどないすいた田舎道をずっと5速で走れる時はさらに燃費は上がり、最高で23.7出たことがあります。燃費計の誤差が4-5%くらいあるようなのでこれでやっと22.6km/hくらいです。混んだ通勤路ばかりではターボなので1200より若干悪くなるかもしれません。私の場合11-13くらいでした。なおこの燃費はECOモードですので、ノーマルモードですと市街地燃費はもう少し悪くなるでしょう。
(8)困った装備
まずアイドリングストップ(スタート&ストップ)ですが、止まってほしくないわずかな停止時間でも止まったり、冬場は勝手に10秒くらいでエンジンが再始動したりとなかなか言うことを聞いてくれません。またサイドブレーキを引いてフットブレーキから足を離すとエンジンがかかってしまいます。私が大柄なせいかブレーキ踏みっぱなしは足がだるくなるんですよね。
ですので私はエンジンをかけたら毎回手動で(!)OFFにしていますが結構面倒です。反転アダプターを取り付ければ(1-2万円かかりますが)そういう手間がなくなります。しかし本来は一度手動でOFFにしたらずっとOFFにする設定であれば済みます。
それから非常に気になったのがヒルホールドです。これは坂道で勝手にブレーキが効いて後退しないという機能ですが、結構くせものです。一つは傾斜の度合いによって作動するかしないかわからないこと(作動すると思い込むと危険)、二つ目はサイドブレーキを引くと解除されること(意味不明)、三つ目はアクセルを踏む踏まないにかかわらず2-3秒で解除されてしまうこと(先行車が発進して急に止まったら怖い)、四つめはアイドリングストップが働いていると坂道で重力に負けて勝手にバックしてしまうこと(かなり怖い)、です。マニュアルには書いていないのですが、「ヒルホールドはスタート&ストップに優先して作動する」というルールがありますので、それに基づき以下勝手な想像で作動の仕方を書いてみます。
まず急な坂で停止したとコンピューターが判断したらアイドリングストップは効かずエンジンは止まりません。フットブレーキで停止状態をキープし、発進時はブレーキから足を離しアクセルを踏むだけにしないといけません。この時にサイドブレーキを引いてしまうとアイドリングストップが働いてしまいエンジンが止まってしまい、結構びっくりします。この制御が謎です。
あまり急ではない坂で停止したと判断したらアイドリングストップが作動しエンジンは止まります。この場合はヒルホールドは働いていませんので、自分でサイドブレーキを引いて坂道発進をする必要があります。
この2つのケースを瞬間的に判断して運転手がサイドブレーキを引くか引かないか決めるのは結構難しいので、登り坂では傾斜にかかわらずアイドリングストップが作動しない(エンジンは止まらない)ように制御を変更して、サイドブレーキは必ず引くようにすれば一番安全だと思います。またヒルホールドについては急坂と感知した時だけ独立して働くようにすればデメリットも最小限になります。そしてアクセルを踏むまでは勝手に解除しない方がいいです。
この制御にした理由があるとすれば、普通のオートマの車しか知らない人(坂道発進ができない人)が坂道でなるべく困らないようにしたかったのかもしれませんが、エンジンが止まらなければ問題は解決しそうです。何か大きな考え間違いをしているのかもしれません。私としてはアイドリングストップもヒルホールドも必要ありませんのでオプションにしてほしいです。
それからワイパーの調整機能が不満です。一番遅いモードにしても結構早いですので、小雨の時はほとんど空拭きになってしまいます。それにプラスしてギーと鳴くと有名なワイパーですから・・・。止まっていると全体的に速度が落ちる制御にすればかなりましになるのですが、フィアットでは採用していないようです。以前乗っていたBMW318tiはそうなっていてよかったです。
ドリンクホルダーは小さいコーヒー缶を入れるとスカスカで不安定、PETボトルは底が四角だと入らない、という具合です。8000円くらいする社外品を付ける人もいるようですが、私は結局何も付けず丸底のペットボトルのお茶や水しか買わなくなりました。
オプションにETCがあるのですが、窓に両面テープ?で取り付けるタイプで、カードを入れているのが外から丸見えになります。これは結構困ります。汎用品を買ってきてグローブボックスの中に取り付ける方がいいです。
(9)総評
いつになく細かくレポートしましたが、それはこの車への思い入れと思っていただいてかまいません。このサイズ(軽自動車より15cm長く15cm幅広)であらゆる場面で使える性能があるというのはうれしいことです。アルファ147でMTの楽しさに目覚めましたので、フィアット500で希望の色とインテリアと装備が選べるのであればまた買いたいと思わせる車です。実際は正規輸入車では問題外、イギリス並行でもスタート&ストップが標準装備ですのでそれなら3代目パンダの方がいいかなと思います。デザインは圧倒的にフィアット500ですが・・・