ステンレス鋼の特性

オーステナイト系
SUS304・SUS316
フェライト系
SUS430
マルテンサイト系
SUS410
磁性 なし あり あり
焼入れ硬化性 なし なし あり
炭素含有量の多いものは
冷却後に割れ易い
加工硬化性 加工効果性大
ニッケル含有量の多い
鋼種は、加工硬化が少ない
冷間加工で多少の硬化が
認められる
軟鋼と同じ傾向の加工
硬化性を示す
耐食性酸性 極めて優れた特徴を
有している
内装用としてはサビの心配
は無いが、
屋外の使用には問題がある
大気中でサビを生じる
ことがある
衝撃と伸び 極めて良好
成形性にも富む
オーステナイト系に比べて
劣る
オーステナイト系に比べて
劣る
溶接性 溶接性が最も良好
ただ溶接の際、500〜600℃
の温度範囲に加熱・徐冷されると耐食性が劣化する
高熱に加熱し急冷されると熱影響部の結晶粒が粗大化して脆化する欠点がある 溶接性は良くない
予熱・後熱処理をしないと溶接割れを生じる
熱膨張 軟鋼の約1.5倍 軟鋼とほぼ同じ 軟鋼とほぼ同じ
熱伝導 軟鋼の3分の1 軟鋼の2分の1 軟鋼の2分の1
注)磁性の有無は板の状態

ステンレスの物理的性質
鋼種
(JIS)
密度
g/p2
比電気抵抗
μΩ-cm
磁性 比熱
cal/g/℃
0〜100℃
平均線膨張係数
10の-6乗/℃
熱伝導率 10の−2乗
cal/cm/sec℃
縦弾性係数
10の3乗
N/mm2
0〜100 0〜316 0〜538 0〜649 100 500
SUS304 7.93 72 なし 0.12 17.3 17.8 18.4 18.7 3.89 5.13 193
SUS316 7.78 74 なし 0.12 16.0 16.2 17.5 18.5 3.89 5.13 193
SUS430 7.70 60 あり 0.11 10.4 11.0 11.3 11.9 6.24 6.28 200
SUS410 7.75 57 あり 0.11 9.9 10.1 11.5 11.7 5.95 6.86 200

ステンレスの機械的性質
鋼種
(JIS)
状態 機械的性質
耐力
N/mm2
引張強さ
Nmm2
伸び
絞り
かたさ
H8 HR Hv
SUS304 固溶化熱処理 206以上 520以上 40以上 60以上 187以下 90以下 200以下
SUS316 固溶化熱処理 206以上 520以上 40以上 60以上 187以下 90以下 200以下
SUS430 固溶化熱処理 177以上 481以上 40以上 60以上 187以下 90以下 200以下
SUS410 焼なまし 206以上 451以上 22以上 183以下 68以下 200以下

磁性について
ステンレス鋼は鉄を主成分とし、これに約12%以上のクロム(Cr)を含み
更に必要に応じてニッケル(Ni)やその他の元素を配合添加して作られる合金鋼です。
この様にステンレスは鉄を主成分としながら鉄の持つ弱点が改良され
特に美観、強度、耐食性、耐衝撃性及び加工性などの点で
鉄よりも優れた特性を備えています。
SUS304は18Cr-8Niで、
オーステナイト系に属するもので
一般建材用に使用されている代表的な鋼種です。
このSUS304は、Cr-Niの成分バランスからみて
安定オーステナイト鋼ではなく
準安定オーステナイト鋼の部類に属するものであります。
従って準安定オーステナイト鋼であるSUS304は
種々の冷間圧延などの加工を加えると磁性を持つことがあります。
即ち成分的にはJIS規格を充分満足しているものでも
強度の冷間加工が行われた製品には磁性があります。
これは冷間加工することにより金属の結晶構造が一部変化して
(準安定オーステナイト組織の一部が変態して、マルテンサイト組織になる)
磁性を持つことになる訳です。

SUS304はJISの化学成分規格を充分満足しているものであっても
冷間加工を施す事によって磁性を持つ事になります
従って、その冷間加工度が増すにつれ、磁性も増し
磁石で感ずるようになるわけです。