◆木造聖一国師像(もくぞうしょういちこくしぞう)

概要:寄木造、像高法衣裾より頭頂73.5cm、膝張51cm

禅宗の寺院では、その宗派の祖や高僧に敬意を表して肖像を作り、仏像と同じように祭ることがあります。
これを頂相(ちんそう)と言いますが、禅宗の一派臨済宗の寺院であった不動院にもその頂相がいくつか残されており、 この聖一国師像もそのひとつです。

 聖一国師は駿河(静岡県中央部)に生まれ、本名を円爾(えんに)、字(あざな)を辨円(べんね)と言います。 初め栄西(えいさい)の弟子栄朝について禅を学びました。しかしそれに満足することなく、嘉禎元年(1235) に宋に渡って無準禅師に臨済宗を学び、帰朝して京都の東福寺を開きました。栄西亡き後には寿福寺や建仁寺にも招かれたという高僧です。

 『芸藩通志』には、この像は聖一国師自身が彫ったもので、もともと東福寺にあったものを恵瓊が持ち帰ったと伝えています。 実際には室町中期の製作と見られており、国師の死後作られた像のようです。顔面に深く刻まれたしわ、きりっと結んだ口元など非常に写実的で、 国師の人柄までを感じさせてくれる優れた仕上がりとなっています。

 また珍しい「輪積み」という製作技法が用いてあり、膝下から下部に二段、膝下から腹にかけて一段の木を積み重ねて作られています。 これは木彫像にはまれな技法で、製作当時の彫刻技法をしるうえでも貴重な像と言えそうです。